蝶を飼う男:シャルル・バルバラ幻想作品集

  • 国書刊行会 (2019年8月24日発売)
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感想 : 4

装丁とタイトルが気になって手に取ってみた。フランスの知られざる幻想作家(翻訳者は必ずしも幻想文学には当てはまらないとしているけれど)の作品集。5篇収録されている。いずれも、1850年代前後に書かれたもので、世間への批判的精神と内的世界の豊かさ、危うさが、あの時代特有の妖しさを持ってると思った。ちょっと、「ジキル博士とハイド氏」を思い出したり。
「ある名演奏家の生涯の素描」は、音楽の表現が美しい。ただ、現実と主人公が見る幻影との区別がつかなくて、やや読みづらい感じ。
「ウィティントン少佐」は、驚いた。この作家の想像力たるや。あの年代に、インターネットやアンドロイド、パソコンを想起させる機械が登場する。それらを作り出した理由が、他人とかかわらず全部自分だけで完結したいから」、というのが、現代の状況と考え合わせると何とも考えさせられる。
「ロマンゾフ」は、魅力的な人物の裏の顔が暴かれる推理小説風。
「蝶を飼う男」はちょっとウィティントン少佐に似た世界観。博物学的な知識と、蝶などの表現の美しさが楽しくありつつ、主人公の悲しみも感じて、もどかしい感じ。
「聾者たち(後記)」は、4人の聾者たちがてんでに思い違いをしてすれ違いを起こす寓話的なお話。しかし、こんな思い違いのすれ違いって、耳が聞こえない場合だけじゃやくて、実は普通の人たちの間でも起こってるよなあ、と思う。

解説がしっかりあって、そちらもまた面白い。「世に理解されず自らの座標軸のみで生きるしかなかった天才的な奇人・奇才の物語」という表現をされていて、この作品集をうまく言い表しているなあと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読書記録
感想投稿日 : 2020年2月20日
読了日 : 2020年2月20日
本棚登録日 : 2020年2月16日

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