一揆の原理 (ちくま学芸文庫)

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レビュー : 6
著者 :
hakuhatuさん 日本史   読み終わった 

本書のコンセプトは「日本における民衆運動の歴史を客観的に分析する」というもので、「一揆の本質は人と人をつなぐ紐帯にある」とする。
一揆というと竹槍を持った百姓一揆をイメージする。要求が通っても通らなくても首謀者は打ち首みたいなどうしようも行き場をなくした農民が窮鼠猫をかむ的な行為の様に思われる。本書ではそういった一揆のイメージが払拭されるのである。
先ず、百姓一揆で農民達は農作業の道具しかもたない。実のところ百姓といっても弓矢や鉄砲、刀の類いはもっているのだが、一揆ではそんなものは手にしない。それは自分たちはあくまでも農民であるということを示すためである。百姓農民であれば領主は彼らの生活が立ちゆく様にする義務がある。百姓一揆は、体制に刃向かう行為ではなく、体制の中で自分たちの要求を訴える行為である。
次に、一揆というと百姓一揆の様に江戸時代がその最盛期と思いがちだが、「中世こそが一揆の黄金時代」である。中世においては一揆は社会的に認められていた。中世の一揆が一揆のスタンダードなのである。中世において、農民だけではなくう武士も僧侶も一揆を結んだ。一揆は契約行為であり、血縁地縁関係でない"人と人との結びつき"なのである。
そして、「日本中世の一揆の原点が一対一の「人のつながり」にあるという事実に注目すれば「一揆の思想」には将来性が残されている」というのが本書の結論である。

一揆の原理をSNS等で結びつけられた現代の民衆運動と結びつけようとする著者の目論みには少々同調し難いが、本書で展開される一揆の原理はいちいち納得がいくのである。一揆の原理に現代的な意味があるかどうかはともかく、契約という視点で一揆を観ていくと、一揆で発現される行為・現象の意味が良く理解できるのである。

レビュー投稿日
2019年9月23日
読了日
2019年9月15日
本棚登録日
2019年9月23日
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