異世界ファンタジー。魔法使いや竜の存在する、アースシーという架空の世界を舞台に生きた伝説の大賢人・ゲドの生涯を綴った壮大な叙事詩。

 第一巻では、飛びぬけた魔法の才をもって生まれたゲドの少年時代、若さゆえに犯した過ちとその償い、自分自身の影との長い戦いについて描かれています。
 以後、巻を重ねながら、やがて大賢人となったゲドが人々を襲う竜と戦い、闇の世界に囚われた巫女を外に連れ出して平和の象徴である伝説の腕輪を取り戻し、長らく不在だった王を即位に導き、不死を求めた魔法使いによって崩された世界の均衡を取り戻し……と、さまざまな伝説を残していきます。
 第四巻からは、それまでの戦いによって力を失い魔法使いではなくなったゲドの、その後や、竜でもあり人でもある不可思議な宿命を背負った娘たちの話などが綴られていきます。

 アニメ映画にもなりましたね、あっちはどうも今ひとつだったけど。(つまらなかったということはないのだけれど、途中から理解を超える超展開だったような……)
「ファンタジー好きなら読まないと嘘だ、映画のことは忘れろ」と人に言われていたので、そのうち読もう読もうとずっと思っていたのだけれど、なんとなく先延ばしになっていました。馬鹿か私は。さっさと読んでおくべきでした。面白かった!
 歴史、人々の行動様式や言語、文化、宗教や神話、自然などの背景、魔法等々の設定がとても緻密で、そういうのが好きな人間にはかなりたまりません。

 ストーリーはというと、やや好みがわかれるかもです。神話的なものが好きならハマると思います。シリーズの後半になるにつれて、壮大さが増すと同時に抽象性が増してきたような感じがあって、個人的には三巻までのほうが、より好きだったかなあ。でも五・六巻の竜と人間の間のエピソードそのものはすごく好きで、最後まで読んでよかったとも思うのですが。

 ともあれ、とても楽しめました。ファンタジー好きな方なら一度は読んでおいて損はないと思います。

2009年11月18日

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