思考脳力のつくり方 仕事と人生を革新する四つの思考法 (角川oneテーマ21 C 186)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年4月10日発売)
3.40
  • (10)
  • (19)
  • (15)
  • (10)
  • (3)
本棚登録 : 221
感想 : 21
4

畏友であり、古くからの飲み友だちでもある前野隆司教授の著書。
慶応義塾大学システム・デザイン・マネジメント研究科長、脳の科学、幸福学の研究者として、これまでの思考を総まとめした本とみた。
以前、クリティカル・シンキングを勉強した際に随分と思考方法の本は読んだのだが、前半はまさにそれをなぞったような内容である。
まさか彼が世の思考法と同じような本を書くわけ無いよな、と思っていたら案の定、哲学的思考も踏まえて深遠な域へと突き進んでいく。
彼の本業でもあるシステム・デザイン・マネジメント視点からの考え方で捉えると、思考の型には四つの段階があるという。

1,要素還元型思考
物事を細かな要素に分解して突き詰める考え方

2,システム思考
要素還元型から一歩踏み込み、要素間を統合して全体を論理的に捉える考え方

3,ポスト・システム思考
第2段階までの論理的思考では必ずしも到達できない、矛盾を容認しながらも構造を理解する考え方

4,システム思想
・・・

自分の言葉でまとめてみようと思ったが、哲学的素養の薄い自身にとっては第四段階は正直言って着いて行くのが辛かった。

実務上システム的な見方が必要となる局面が多いので、ポスト・システム思考までは十分に理解できる。
特にアーキテクティングと著者の言うシステムの有り様に対する初期の考察には、いつも苦労させられる。
議論を尽くしても論理的に正解に辿り着くのは難しく、最後はベストではなくベターを求めていくことが重要というのは納得至極だ。

社会システムではないが、会社での戦略検討にもアコモデーション的な考え方の必要性には頻繁に直面する。
妥協ではなく合意で局面を乗り越えていくことは、言わば弁証法に似た考え方でもあり、矛盾する複数の事柄を成り立たせるために超越したイノベーションを探すことと同じだと感じた。
これは普段から所属部門にも言い聞かせていることであり、まさにして得たりと感じた次第である。

会社内で議論していると、この段階の考え方を理解していない人も多いので、少なくともここまでは皆に読んでおいて貰いたいものだ。

著者は、このような四段階の中を行ったり来たりしながら、システム的な考え方をまとめていくべきだと主張しているが、第四段階までを理解するのは至難の業ではないだろうか。
またそこまで考えを尽くす必要がある局面は、どの程度まであるのだろうか。
そこだけはまだまだ得心の至らぬところである。
次回飲みに行く時にでも、そのあたりをじっくりとご教示頂くこととしよう。

ともあれ、システムを生業とされる方には一度は考えて貰いたい思考方法の俯瞰図であると感じた。
素直に言って、良い仕事だと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想・哲学
感想投稿日 : 2013年5月19日
読了日 : 2013年5月11日
本棚登録日 : 2013年5月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする