もう好みすぎでやばかった。
「この本について、スピーディーな展開、全篇をつらぬくサスペンスフルなストーリイ、きらびやかで刺激的なイメージの洪水、荘大で奥深い設定、キャラクターや世界のリアルで魅力的な描写……と、この手の常套句を並べてみても、みな正しくはあるのだけれど、なんとも間が抜けてみえてくる。それに、本当のスゴさ、おもしろさは、こうした表現におさまりきらないところにあるのだし。」
という山岸真さんの解説の始めの部分で、だいたい自分の言いたいことは、自分以上に言われてしまった感がある。
SF的な未来像と場面場面の圧倒的なかっこよさに、自分は餌をがつがつむさぼる犬のように、読みながらひたすら浸っていた。
ただ、こうしたかっこよさもありつつ、自分が大好きだと思える部分は、ヒトの物語が中心にあり、それを設定を通してずっと描いていることだ。
自身の身体性や感情というものに距離をとっているケイスという人間が主人公で、空虚さが彼の特徴のように見える。しかし、作中に登場する彼をとりまくさまざまな事象にこそ、ケイスという人間が描写されているように感じた。
彼の「怒り」はどこにあったのか。
このキャラクタの表現手法こそ、自分は本作で一番気になる点。
浜辺で走るリンダの姿と、最後に見かけるケイスの姿がとても印象的だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年10月5日
- 読了日 : 2012年10月3日
- 本棚登録日 : 2012年10月5日
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