念じるだけで火をつけることができる「念力発火能力(パイロキネシス)」を持った女性の物語。
「超能力を持った女性」の物語を3編まとめた「鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで」の中の「燔祭」の続きになります。
宮部みゆきには超能力を主題、または道具に使ったお話が結構たくさんあります。「蒲生邸事件」で日本SF大賞を受賞しているのは、ファンであればご存知でしょう。
数ある「超能力」の中で、いかにも戦闘向きの能力を、25歳の女性主人公である青木淳子に持たせた時点で、今で言う「厨二病」的展開と、それを宮部みゆきが書いている時点でラストのカタストロフィとが予想されてしまうわけですが、この巻では「厨二病」的戦闘が外連味たっぷりに描写されます。
自らを「装填された銃」として若い女性らしさのかけらもない生活を送り、悪とみなしたものは容赦なく排除していく…ある意味痛快な戦闘ですが、その最中に、青木淳子は自分がただ殺したいから力をふるっているのではないかという恐れを抱きます。
「パイロキネシス」の存在を信じて彼女を追う牧原刑事、そしてもう一人の「パイロキネシス」持つ少女倉田かおりがストーリーに絡みだして下巻に続きます。
ファンとしては宮部みゆきの真っ向勝負の超能力ものを堪能できて嬉しい限りですが、できれば「燔祭」を先に読みたかったと思います。「燔祭」を含めた形で本にすることはできなかったのでしょうか。
あとは、牧原に青木淳子を捕まえさせてやりたいなあ。牧原も青木淳子もそれぞれがトラウマを解消して、青木淳子は罪を償って、結婚して旦那さんの煙草にパイロキネシスで火をつけてやるエピローグで大団円…なんて展開はまずありえないでしょうけれど、でもたまには宮部みゆきのそんな甘っちょろいハッピーエンドも見てみたいとちょっとだけ思いつつ、下巻を開くことにします。
- 感想投稿日 : 2015年8月25日
- 読了日 : 2015年8月25日
- 本棚登録日 : 2002年9月13日
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