大地動乱の時代: 地震学者は警告する (岩波新書 新赤版 350)

著者 :
  • 岩波書店 (1994年8月22日発売)
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感想 : 12
5

残念ながらこうなってしまった現在、日本に住む人すべて、読んだ方がいい本だと思う。なお、本の提言は、首都圏集中をやめて分散型社会を目指すこと。私は、自分個人ができることとして、その動きを全力で応援する。

私にとって、この本のすごいところ。読むのに大変な勇気が要ったので、今回は多めに書いておく。

1。過去に関東、東海域を襲った地震を中心に、幕末からの時代を読み解いている。とりわけ、幕末から関東を襲ったというそれぞれの地震について、各地名で(水道橋、丸の内、品川など。。)揺れ具合、建築物への影響、火災などの二次災害について記録が豊富かつ丁寧に紹介されていること。

2。過去の大きな地震前後の、政策決定や社会事象が書かれている。
(例1)ペリー来航:1853年。実は19世紀初頭、とりわけカリフォルニア州を獲得した1848年からは日・露・英の船がたびたび来ていた。幕府も海防を重視しはじめるが鎖国体制を買える気はなかった。1852年、通商関係のあるオランダが対外政策を変更するよう忠告したが、幕府は真剣に検討せずペリー来航の動転した。 :p7
(例2)実はペリー来航・開国の4ヶ月前、相模湾にM7級の大地震があった。:p8
(例3)大正の大地震後、天罰だという天けん論が広く唱えられ、翌々月に贅沢自粛のスローガンが発せられた。また、翌年には治安維持法も成立している。なお、直後のモラトリアムの発令は、4年後の1927年に起きた金融恐慌の引き金と考えられている。 :p79-80

3。過去の動きの間隔、推測されるプレートの動きについて、懇切丁寧に説明されている。すごく丁寧なので、難しいけれど素人にもほとんど理解できるぐらいに。そして、それらの著者の分析から、今後起こりうる予想が説明されている。

4。過去の文献や地層の研究について、関東の地層がどのように特別(に軟弱と考えられている)かが説明されている。
例)NYは約5億年前の岩石がセントラルパークに露出していて、マンハッタンのビル群はその堅固な岩盤の上に建てられている。東京を含む関東平野の半分ちかくの地盤は、約2万年前以降に海や川に体積した砂や泥で。超高層ビルのほとんどは地下の古い地層を支えにしているが、それすら2、30万年前に体積した「東京礫層(れきそう)」や「土丹(どたん)」とよばれる数10から100万年前の軟岩で、NYと比較にならない。 :p202

5。今後、何が起こりうるか?
・地震工学の不完全な点が指摘されている。
(これを知るのは恐ろしいけれど、現実の認識が大切)
・東京都が出していた被害予想の引用
(区部における応急復旧日数)
上水道17日、都市ガス26日、、電気6日、電話20日、下水道66日
・日本の東西の道、ケーブルなどが分断される可能性

6。具体的な対策が書かれている
それは、分散型国土の形成。
1)首都中心主義の特殊さ:国土の3.6%に総人口の26%が住んでいる。 :p222
2)なぜ集中したか?:実は経済合理性の自然な流れではなく、昭和16年頃に路線が確率して戦後猛烈に強化された官僚主導型業界調整体型に起因する。
3)分散のメリット:
・予想される災害による首都の混乱が起きた際の、国内的および国際的混乱の軽減。
・地方の復権により、社会経済的な復活だけでなく、一次産業の復興も期待できる。これから世界的な食糧不足が懸念されているところ、農業水産業を活性化させるのは地球市民としても価値がある。:p224あたり


最後に、今後調べたいことのメモ
・では他の都市はどのような地盤に立っているのか?
・本書に書かれている、関東と東海以外の危機について。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自然科学
感想投稿日 : 2011年4月22日
読了日 : 2011年4月22日
本棚登録日 : 2011年4月22日

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