人物達の、望むように生きられない/望むような自分でいられない満たされなさが、多くの収録作に共通して沈澱していた印象。ただそれがすっかり常態になっているからか、彼らは殊更に苦しんだりのたうちまわったりはしない。静かにため息つきつつ粛々と生活している。
そんな日々にあって時折よぎるほのかな夢想。作中では、それにこたえるほどの劇的なイベントが起こるわけではないけれど、ささやかな出来事が人物の心の襞に触れ、そこで生じる彼らの感情の機微などが繊細に描かれる。短篇ならではの簡潔な幕引きもあとぐされなくて美しい。
個人的には「ミスター・シング」以降4作が特に好きだった。(とはいえ少しずつ読み進めていたので、単に時間の経過とともに序盤の作品の記憶が薄れてしまっただけかもしれない)
中には歴史的事件を扱った作品もあり、背景がわからなかったり、突然の血生臭さにおののかされたりすることもあった。ただの素朴なヒューマンドラマの耕地で終わらない、独立戦争や内戦の苦しみを抱えたかの国の姿がこちらに印象付けられ、暗澹たる気持ちにさせられることもあった。
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- 感想投稿日 : 2015年11月22日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年11月22日
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