フランドルの冬 (新潮文庫)

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本棚登録 : 76
レビュー : 6
著者 :
haroldさん 小説(その他)   読み終わった 

暗い作品というよりは、自分の問題意識を真剣に書き込んだ結果こうなった、という印象を受けた。そして何十年も前に書かれていながら、そうした問題意識は今なおアクチュアルであり続けている。
例えばコバヤシが抱き続ける異邦人としての引け目の感覚は、グローバル化、また日本の国際化がスローガンと化した今、確実に旧時代の遺物とみなされつつある。しかし、それは完全に克服されてはいないことを、実感をもって共感する現代の読者もいるのではないか。
後半やや説明的だと感じる箇所もあったが、この小説では一文一文の中で個々のテーマがミクロなレベルからマクロなレベルまで響きあっている。ただし非常に緻密に構成されていながら、この小説のスタイルは決して何か啓蒙の意図を持った線的なものではなく、小説内にも、読者とも、対話の余地を残している。それは、この小説の舞台が精神病院であり、狂気という未分化なものをその中心に持っていることが大きいのだろう。
快作です。

レビュー投稿日
2013年8月18日
読了日
2013年8月18日
本棚登録日
2013年8月18日
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