新版 人生論 (角川文庫)

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本棚登録 : 400
レビュー : 29
著者 :
制作 : 米川 和夫 
haru1301さん ロシア文学   読み終わった 

 最初に水車小屋の粉ひき男の話が出てくる。彼は良い粉を作り幸福になるため水車や川の流れ、やがては水の研究にまで没頭する。周囲の人々が粉ひきは?と助言するが、粉ひきより川の流れが大事なのだとことごとく論破する、彼の「粉ひき理論」完璧なのだ。科学技術は幸福のために研究進歩しミクロの世界から宇宙の果てまで覗き見る。人々も富と幸福な生活を得るがため幾度も苦難の日々を乗り越え働き生きる。トルストイさんは云う、果たして真の幸福に役立つのですかと。

−−はい、私の人生は粉ひきを忘れたこの男のようでした。

 古代より人はいまだにその苦悩に悩み病気をおそれ死を恐れる。しかし、幸福になることや死を恐れることもない生き方があるとトルストイさんは説く。人々の周囲に存在する動物や植物の自然の営みは苦しみや死と云う意識を伴わない、人も同じように生まれ成長し老い死ぬ。でも人間は違って動物的行為を抑制する「理性」というものがある。だから幸福を断ち切る死を恐れ、悩む。ではどうすれば良いか。そんなことは何千年もまえから人々は知っている、それは、「愛」だ。

−−私も知っていました、でも愛じゃなかったようです。人生が否定されました。

 トルストイさんは「愛」の文字を軽々しく使わない。この一文字が登場するのが本書の中盤にやっとこさ現れる。じゃ、その「愛」ってなんですか!?それは、それは、それは・・・自分ではなく他人を幸福にするために生きることです。そうすれば、芽が出て葉が出て花が咲き実を結びやがて枯れる花の一生のようにあなたの人生も死の恐怖を意識せずに送れるのですよ。あなたの知らない真の幸福、真の真理の世界があるのです。でも、あなたにそれを見つけられますか?人のために死ねますか?そんな生活が出来ますか?そんな人生が送れますか?

 トルストイさんは自身にも語りかけ苦悩し読者(私)とともに、真の生命、生き方、幸福を探し求めてくれる。将来の愛の為に今の小さな愛を捨てるならば、自分ならず他の誰をも愛していない将来の愛などない「現在いま愛を発揮しない人は、愛をもたない人なのである」

−−わ、分かりました。

レビュー投稿日
2013年1月4日
読了日
2011年4月7日
本棚登録日
2013年1月4日
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