三島由紀夫vs東大全共闘との歴史的な討論。
歴史的とは「歴史的価値を持つ」という意味だが、ネガティブに捉えれば「歴史的価値しか持たない」ということでもある。
三島由紀夫の言説はさすがと言うより他にない。日本人が自らの政治思想を組み立て上げる際に避けて通れないのは天皇の問題であり、そこへ向かってどのようにアプローチしていけばよいのか、そこを諄々と説いている。これはまさにポジティブな意味で歴史的価値を持つ。
だが、全共闘側の理屈は……これは何だ?
借り物の言葉を縦横無尽に使っているだけで、響いてくるものがなにもない。要するに、当時の知的ファッションを着込んで仲間内にだけ通じる言葉で語っているだけ。詰る所、彼らの言説そのものが共同幻想の枠組みから一歩も出ていない。
ネガティブな意味で歴史的価値しか持たぬ議事録であって、これをありがたがるのは「あの頃は青年たちは……」云々の懐古趣味でしかない。
この感想は、巻末に置かれた全共闘の振り返りを読んで更に強いものとなる。
今の表現を用いるならば、「中二病」。
つくづく学生運動は何も生み出さなかったのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会
- 感想投稿日 : 2012年10月14日
- 読了日 : 2012年10月14日
- 本棚登録日 : 2012年10月14日
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