ジョルジョ・モランディ-人と芸術 (平凡社新書)

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レビュー : 8
著者 :
harukuさん アート関連   読み終わった 

絵を観る時、最も退屈に感じるモティーフは何か?
個人差はあるでしょうが、私の場合、長らくそれは静物画でした。
なんで机の上のリンゴとか、水差しとかどこにでもあるようなツマラナイモノを描くのか?
アート趣味に入ったきっかけが幻想絵画だったせいもあり、セザンヌの魅力に目覚めるまでは、特にそう思っていました。

この本はそんな静物画だけを一生涯描き続けた画家、モランディを語る1冊です。
今回、原発事故の影響から展覧会が中止になったので、ガッカリついでに、この画家の事、少し勉強してみようと手に取りました。
平凡社新書の薄い本だったので、基本入門書と思ったのですが、中身は結構マニアックで、美術史的な立ち位置からモランディ絵画を解説すると、後半は温厚なモランディを怒らせた1冊の評論集について考察されます。

「わたしは全生涯で、制作に必要な平穏と静寂以外、何も求めてこなかった」
この言葉通り、故郷ボローニャから一生涯出ることもなく、独身を通し、アトリエは普通のアパートの1室で僧房と呼ばれ、生活は修道僧のごとし。
モティーフにするのはセザンヌ以上に地味な古びたビンやら壺やら皿などです。
こんな画家が怒って出版差し止め裁判まで起こしたのは何故?
興味のある方は読んでみてください。
私は結構オモシロかったです。

他に個人的に参考になったことは、うすうす感じていたニコラ・ド・スタールとの共通性。
でもベン・ニコルソンまでモランディへ傾倒していたとは知らなかった。
指摘されれば納得ですが、驚いたのはモランディがカラバッジョを評価していたことで、一見これは正反対の画風ですよね。

方や時間が喪失し、宇宙が永遠の静寂の中で眠りにつくようなイメージを喚起させる画家で、方やイタリアバロックの絶対王者。
濃い影の中に雷光が瞬くと、浮かび上がるのは、ナイフが走り血しぶきが滴り苦悶と激情の表情が交差する劇的瞬間を描く画家です。
全部正反対。
でも評価される前からモランディはカラバッジョオタクだったこの不思議。

ただこれなんとなく分かるんですよね。
一見、まったく違うものであったとしても、一人の人間の美意識って、深い底の部分で繋がる根っこがきっとあるです。
モランディとカラバッジョはそれがあった。
一人は酒飲みの喧嘩屋で殺人まで犯した画家で、一人は僧侶さながらの静寂だけを求めた人だったけど、響き合う根はあったんです。

以前、綾波レイへの記事でグールドと夏目漱石を薦めたら、グールドが漱石の草枕のオタクだったと知った時の驚きを思いだしました。

レビュー投稿日
2011年9月6日
読了日
2011年9月6日
本棚登録日
2011年9月6日
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