和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年12月15日発売)
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感想 : 32
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和橋と言う本で、中々面白い本だったと思います。

まず和橋と言う言葉の定義に関してですが、著者は中国に渡った日本人と言う定義で話を進めています。架橋は各国に渡った中国の人間だったので、和橋は中国で活動する日本人と定義すべき、と言うロジックは全然通ってないと思いますが、この本の対象は、「中国に渡った」和橋であります。面白いです。

ストーリー形式で話が進んでいきますが、話の発端は2ちゃんねるに書き込みをした、中国の田舎で暮らしていると推測される日本人を探し出し、インタビューしようと言うところになります。

書き込みに残された幾つかの痕跡から、彼の身元を追っていくのが前半になりますが、途中で話が終わり、著者のこれまでのインタビュー話に切り替わります。

例えば、マカオで売春する日本人女性の章では、日本人であることを武器にして海外で積極的に富を得ようとする女性たちの話が出てきます。ギャンブル的でもそこに魅力を感じる女性たちの生き様ですね。力がなければ夢を描けない日本より、一晩17万と言われる世界に夢を見る、と。

続いて中国に於けるエリート在員の暮らしについて。領事館などで働く人々、大企業の駐在員が月30万と言われる日本人向け高級マンションで暮らし、日本に居るよりも日本らしい、かつて日本人が理想として持ってきた生活を謳歌する人々の話は中々面白かったです。インターナショナルスクールは月々20万円だっけな。現実問題として子供の教育をどうすべきか、というのは難しいですね。どうでも良いですが、我が母校の名前が出てました。これだけ金を掛けて我が母校に入れた親たちは発狂するのでは…。閉じた社会とそこでクラス人々の未来はどこに続くのか、興味深いです。何にせよ遠くない未来に既存のシステムではやっていけなくなるでしょうね。

更に続いて、中国で活動する日本人ヤクザの話。日本人社会が中国社会でやっていく為に必要なインフラとして必要とされ、金とコネの力で機能する暴力団システム、その成り立ちについて。

そして閑話の最後に日中友好と言う良く分からん言葉に踊らされ、また自分の道を生きている人々の話ですね。これはそこまで斬新な話でもなかったです。

そして話は戻り、当初の2ちゃんねらー探しが終わり、インタビューしている場面に戻ります。簡潔に言えば、窮屈な日本社会より、旧態依然で混沌としている中国の方が住みやすい人々も居るようです。

普段目にしない中国に暮らす日本人のナマの声が収録されている(と思われる)ので、知識として非常に有用だと思われます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Education
感想投稿日 : 2013年3月24日
読了日 : 2013年3月24日
本棚登録日 : 2013年3月24日

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