猫と罰

  • 新潮社 (2024年6月19日発売)
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感想 : 4
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A cat has nine lives.「猫に九生あり」という言葉がある。古代エジプトからヨーロッパに伝わった言葉だそうで、猫はしぶとく9回生き返るそうです。主人公はかつて漱石と暮らした黒猫で、人間を信用しておらず漱石のことだけを敬愛し自ら孤独を選んで生きている。9回目を生きる黒猫が迷い込んだのが、魔女と言われる女店主が営む猫まみれの古書店。猫と話せる魔女には何か秘密があるようだ。しかし人嫌いな黒猫も魔女とは距離を置く。店に頻繁に来る小学生の女の子、円がいる。彼女は小説を書いては店に持ってくる。時が過ぎ、店に来なくなった円を思いがけない場所で見かける。ここから話は急転直下。円を苦悩から救うため黒猫は魔女と力を合わせる。そして円を、魔女を、そして自分の心を解放させていく。

惜しいことにワクワクが足りない。良く言えば優しく温かいファンタジーだ。苦悩を乗り越え目標を叶えるには、自分自身の強い気持と周囲の支えが必要だ。一人で立ち向かうのではなく互いに助け合い、支え合っていこうというメッセージでもある。社会がもっとウエットだった昔の小説では苦悩に対してはむしろ個人が一人で立ち向かう物語が多かったが、皆で助け合う絆の物語は社会がそれだけドライになってる現代を象徴している。社会と個人のどちらが大切なのか、どっちに転んでも幸せに感じる人と不幸に感じる人はいる。よくあるテーマではあるので、第三の方向性はないのかと思ったりもする。



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年8月7日
読了日 : 2024年8月7日
本棚登録日 : 2024年8月7日

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