変身 (講談社文庫)

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本棚登録 : 14502
レビュー : 1416
著者 :
hee0190さん [文学・評論]ミステリー・サスペンス   読み終わった 

今でこそ、数々のSFやサスペンスで描かれる「脳モノ」。
映画やドラマ、小説等で触れる機会も多いせいか、本書を手に取った際、裏表紙のあらすじや帯のコメントを拝見して、なんとなく話の流れを想像してしまう本作。
そうとなれば否が応でも期待とともに注目してしまう、その「変身」ぶりと、東野小説ならではの文章表現。

「圧倒されました...」というのが正直な読後感です。

主人公である成瀬純一の「変身」ぶりとそれに対する本人の恐怖・葛藤。
立場・考え方・関係性がそれぞれに異なる周辺人物たちの人間模様。
本作では、そのひとつひとつがとても丁寧に描かれています。

また、物語の「視点」は終始、主人公の視点。
他の登場人物のメモや日記という形で、異なる視点からの補足はあります。
が、主たる「視点」が一貫しているからこそ、自らが「変身」していく様子や恐れ、周りからどのように見られ・周りの人間を信じてよいかどうかの不安を、主人公と同じ目線でより深く追体験できる。
これが、より一層「変身」を引き立てます。

ときにグロテスクな描写もあります。
でも、だからこそ、「変身」前後の変化が際立つのかもしれない。
また、そんな描写があるからこそ、それに抗おうとする姿が際立つのかもしれません。

「生きているというのは・・・(中略)。それは足跡を残すってことなんだ。」という印象深い台詞。
これに「後ろにある足跡を見て、たしかに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。」と続きます。
誰しも、忘れてしまいたい過去や断ち切りたいしがらみなども多々あることでしょう。
けれど、それらを全部ひっくるめた「足跡」によって、今、自分が生きていると実感できるのかな...とも思います。

読了後のこのずっしり重量感。
人間をつくるもの。自分を構成するもの。自分の思考や心はなにでできているのやら?
ときには、そんな重いテーマに想いをはせるのも一興かもしれません。

レビュー投稿日
2016年10月11日
読了日
2016年10月11日
本棚登録日
2016年9月28日
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