イエロー・バード

  • 早川書房 (2013年11月8日発売)
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初読。イラク戦争を舞台にした戦争/青春小説である。イラク・フセイン政権との湾岸戦争で米軍は被害を殆ど出さずに勝利した。物量と科学力を背景にした湾岸戦争はコンピューター制御による大規模な空爆を中心とした現代的戦争だった。その火種は彼我の戦力差への絶望感を産み、イスラーム戦士を攻撃の対象を軍事目標から民間人へと転換したテロリズムに走らせた。それに応じたイラク戦争は大規模な地上軍を展開し、さながらベトナム戦争を想起させる泥沼化の様相を呈した。動員された兵士は、敵味方の区別がつかないゲリラ戦に苦しみ、帰国後は後遺症による現実社会への不適応に苦しんだ。イラク戦争に従軍した作者はイラク戦争を描くにあたり、かつてのベトナム戦争文学を意識的に模している。作者の分身である主人公の青年バートルにとって「国家/家」とは「父」が不在の不安定な存在であり、それが彼個人の存在に不安定さの影を落としていた。彼は自ら戦争の大義を、ひたすらに初年兵のマーフィを生きて祖国に戻すことに見出すが、マーフィーは過酷な戦場で次第に精神的に消耗してゆく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年7月10日
読了日 : 2016年7月10日
本棚登録日 : 2016年7月10日

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