ユダヤ人 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (1986年11月20日発売)
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 古代、聖書の中に現れるユダヤ人から、中世のヨーロッパ、特にスペインや東欧のユダヤ人、そして近代ヨーロッパを経て、シオニズムの運動が起こったり、ロシアやドイツでの迫害が起こったり、というユダヤ人の歴史。著者はイスラエルの大学に留学したこともあるイディッシュ語・イディッシュ文学の専門家。
 ナチス時代のホロコーストの話は最後にちょこっと載っているだけで、現代に至るまでの中世、近代の話がメイン。まず聖書において、「排他的で妬み深い」(p.16)ヤハヴェ神を、ユダヤ人が「唯一神教として信ずることにより、一方では神は彼らを他の民族に増して愛し、保護する。しかし神がこのようにユダヤ人を選民とし、ユダヤ人もまたヤハヴェを彼らの民族神としたことが、その後何世紀も続く異教徒のユダヤ人嫌いをひきおこすことになるのである。」(pp.16-7)という形で、分かりやすくまとめられている。その後、各地域でのユダヤ人の活躍、評価などが取り上げられるが、その中でも特に驚いたのが、スペインがユダヤ人に対する追放令を公式に解除したのが1968年12月16日(p.56)という部分だった。また、ドイツ語に対してイディッシュ語があるように、スペイン語に対して「ジュデズモ」というのがある(p.61)というのも初めて知った。そしてユダヤ人と言えば「高利貸し」というのが定番だが、「これはたとえ低い利率であっても、教会はこう呼んだのである。実際には彼らの商売のやり方は質素で、少しの利子を取ってお金を貸すだけであった。」(p.72)というのも、全く知らなかった。本当に高利貸しなのかと思っていた。あとは、ユダヤ人はペストにかかることが少なかった、という事実(p.82)。「その理由は彼らの間には衛生学や医学の知識が普及していたし、また隔離された生活を送っていたこともある」(pp.82-3)らしい。そしてさらに驚いたのは、作曲家のワーグナーは反ユダヤ主義者だった、ということ。ワーグナーの曲は「イスラエルの公けの場では演奏されないことになっている」(p.173)らしい。物を知らないというのは恐ろしい。偏りのない、客観的なユダヤ人史を扱った新書。(15/11)
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2015年11月23日
読了日 : 2015年11月23日
本棚登録日 : 2015年11月23日

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