音律と音階の科学 新装版 ドレミ…はどのように生まれたか (ブルーバックス)

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  • 講談社 (2018年5月16日発売)
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感想 : 22
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 西洋音楽で現在一般的に使われているドレミの音階はどうやって決まったものなのか、なぜ他の音階よりも使われているのか、ということを、図やグラフを用いて数学、物理の立場から説明したもの。「従来の本は数学と物理学から一面的な説明をするのみで、なぜドレミ…という音階が人類に受け入れられたかには触れていない。この本ではサイコ・フィジックス(心理物理学あるいは精神物理学と訳される)に拠って、心理学の側からもこれを説明した。専門書は識らないが、一般書では日本で最初の記述であろう」(pp.3-4)ということだそうだ。著者はビブラフォンでジャズを演奏しているらしく、特に後半はジャズの話が出てくる。
 1つ前に読んだ『数と音楽』で、音律や音階、倍音について概要は知ったが、この本はそこにフォーカスして、より数学、物理学を使った説明になっている。理系ではないおれでも一応、なんとなくは分かる程度の内容。ただ本当に理解しようと思うとおれには骨が折れる。この本の中盤からは「不協和曲線」が何度も出てくるが、「不協和は明確には定義できない。定義があいまいなままで実験してしまうのはちょっと心配だが、それでも以下に示すように、説得力ある結果が導かれた。このあたりは、ファジー制御(あいまい制御)が成果をあげるのと似ている」(p.112)と書いてあり、ファジー制御って何なのか気になった。調べてみるとAIとかと関係のある「ファジー理論」を勉強しないといけないらしい。ちょっと難しそう…。「コードとコード進行」のところで、ちょっとだけ和声法で勉強したことがあるが、「最近はドミナントからトニックという終わり方は『いかにも』という感じなので、カデンツでは避ける傾向がある。」(p.156)そうだ。へえ。じゃあどんな終わり方の例があるんだろう?と思い、なんか色んな楽曲の終わりの部分を注意して聴いてみようという感じ。もう1つ、「ジャズの改革者の一人、ジョン・コルトレーン作曲の『ジャイアント・ステップス』のコード進行」(p.218)というのがあって、これが「『5度円が360度で閉じる』平均律ならではのコード進行」(p.219)というから、それはどういうものなのかぜひ聴いてみたいと思い、今聞いている。難しそうだけど、これすごいカッコいいな〜という感じ。というかジョン・コルトレーンって名前は聞いたことあるけどジャズの曲自体を聞いたことなかった。こういうの家で流したらお店みたいになるだろうなあ、とか。後ろの方に、色んな楽器の音の出る仕組みが解説されているが、その中で「1930年代、カリブ海最南端の島国トリニダード・トバゴ共和国で、イギリス政府によりドラムの使用を禁止された黒人たちが発明した。」(p.189)のがスティールパン、らしい。ドラムの使用を禁止、とかそんな決まりがあるのか、という驚き。でも打楽器全部が禁止されなくてよかったねえ、という感じ。あと、テルミンの不思議さは何度見ても慣れることがないけど、「オーストラリア生まれの作曲家パーシー・グレインジャーは1930年代に、早くもこのテルミンのための作曲を試みている」(p.249)ということで、<Free Music No.1>という作品があるらしい。それをYoutubeで聞いてみたが、なんとも不気味で、ちょっと笑える。ガムランも面白いけど、「ガムランの個々の楽器の調律の違いが、そのセットの音楽的な個性を生む。1つの村には1つの調律、あういは音律がある。村人はそれぞれの音律を誇りにしている。(略)西洋音楽ではうなりは悪玉だが、ガムランではそうは見なされない。むしろ、うなりが与える深い陰影を活かす演奏こそがよい演奏であるとされる。(略)ガムランでは、複数の演奏者が互いにコミュニケーションをとりながら音の中で遊ぶことができる。こうした特徴が評価され、最近は日本の学校教育にも取り入れられている。」(pp.183-4)って、そんなの聞いたことなかった。でも西洋音楽の枠組みを相対化する、というのは学校教育のどこかで行われなければならないんじゃないかと思った。
 音律、音階について数学、物理的な見方の入門部分が学べる気がするが、それ以上に、色んな音、音楽を捉える訓練の素地になりそうな内容だったと思う。(24/01/29)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2024年1月29日
読了日 : 2024年1月29日
本棚登録日 : 2024年1月29日

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