桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)

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本棚登録 : 1149
レビュー : 105
著者 :
へなさん 2011   読み終わった 

彼の男女関係を覆う世界観はとても切なく流麗な物に思う。

孤独と退屈、宿命。そうした悲痛な感情を恋愛と成す。

感情や関係、環境や過去と価値観。あらゆる形の有たない物が、附随されただけの玩具だと形容は沁々と心を染めてゆく。
戦争という恐怖や死、巨大な破滅を与える事。未来を実際以上に絶望と見せる物を巧みに駆使された『戦争と一人の女』は傑作だった。

不可思議を不可思議の儘に留める『姦淫に寄す』や『不可解な失恋に就て』も、それなりの魅惑があった。
『桜の森の満開の下』は、ただ情景の余りの美しさ。一つ一つの描写に於ける色彩の華やかさには見惚れるものがあった。
『白痴』では、意外な題材の活かし方にはじめは面白さを見出だせそうには無かったが、空虚と苛立ち、もどかしさ故の“愛”というには覚束ず、それでいてもっと重い感情が産まれたのだと思うとただ感嘆した。
最後の締めには何とも云えない憐れみにも似た美しい閃光が見えた気がした。

どの噺にも、男女の現実的で幻想的な、醜悪で神秘的な心描写があり、様々に魅せられた。
静かな言葉の遣り取りさえもしんみりと美しく、素晴らしいと思った。

レビュー投稿日
2011年8月14日
読了日
2011年8月14日
本棚登録日
2011年8月14日
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