人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11)

著者 :
  • 中央公論新社 (1978年3月10日発売)
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本棚登録 : 764
感想 : 97
4

谷崎の作品で、これ程に情景と色彩を意識した作品は無いだろう。
文学と云うよりも絵画と云う芸術に等しい、オスカー・ワイルドの"サロメ"(或いは"ドリアン・グレイの肖像")を想わせる箇も屡々見られる劇的な作品である。
表紙絵・挿絵の水島氏の作品も、"サロメ"にあるビアズリーの作品の雰囲気を意識した、日本特有であって、幻想的・異端な美の描写が何とも云えず文面を誇張する。

"人魚の嘆き"では、憂う情や退屈の苦痛さえも情景として色彩と変える様で、此処では特に水島氏の作品が活きている。
美麗で繊細な描写に絶句する。

"魔術師"も又、感情よりも情景を意識した作品であるが、これはまた別の悲劇を映している様に感じた。
最上の美を有った者こそ真の孤独者であるのだろう。妖艶たるは即ち孤高である。幻惑させ得る魔術師は現実から隔絶され、最も哀れな存在であろう。
対照的な"女"は最後に醜悪な姿に変えられるが、其れは誰かを愛し愛される事の出来る女への魔術師の嫉みでもあり、羨望でもある様に感じた。
対極の存在を魔術を以て、美と醜と云う両極に、虚と愛の両極に、容貌でさえも変えて仕舞う。酷く悲しい噺。

全体の作品としては、矢張り小説としての評価は低い様に想う。
芸術としては魅力のある物で、評価は4にしておく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2011
感想投稿日 : 2011年8月21日
読了日 : 2011年8月21日
本棚登録日 : 2011年8月21日

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