家畜人ヤプー 下 ドリスとクララの巻

著者 :
  • 太田出版 (1993年3月1日発売)
3.52
  • (4)
  • (5)
  • (16)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 63
感想 : 6
3

沼正三の世界観は、現代の縮図を極端にこねくりまわしたモノと云える程、理論・哲学・歴史的側面から見て思わず唸ってしまう程、日本の特性を巧みに捉えていると感じる。
性差に於ける倒錯観念にも、惹き付けられるモノがあり、此の作品にはソレを「日常」としてふんだんに取り込まれている。

「家畜人ヤプー」の世界は、官能としてでは無い官能美が多く孕まれ、読者の性的興奮を根底から引き摺り出す魅力がある。

発想は無尽蔵と云える程、人々を圧巻させるに十二分な世界を確りと、隙間無く築き上げているが、
其の創造性故に段々と惰性や厭きを覚えてしまう。

ラストの展開に期待していたが、結局「ヤプーの世界」は亀裂すら入らず…の終幕で、落胆せざるを得なかった。

上中下巻の三冊の間に流れた時間はほぼ一日で、其の時間の圧縮率にも正直の処、やり過ぎ感が拭えない。

ラストは決して納得のいかないものでは無く、歯切れの悪さを感じる訳でも無いが、
もう少し展開性があっても良かったのでは、と思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2013
感想投稿日 : 2013年2月1日
読了日 : 2013年1月31日
本棚登録日 : 2013年1月31日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする