うーん、わかってたけどダメだったね!笑
『ジョジョの奇妙な冒険』の、DIOを主役において
DIOによる手記、という形をとったスピンオフ小説。
まさかの西尾維新。
自分の中で、「ディオ・ブランドーってどういう人なのフェスティバル」が
開催されてしきり、
そのヒントを少しでも得たくて読んだんだけど、
これは、プロがお金を取って出していい本じゃないと思うなあ。
PIXIVとかで投稿されててもブックマークしないレベル。
まず第一には構成がまずくて、
①1部の出来事の回想
②3部の出来事の進行
③6部裏(プッチ神父との交流)
の三つを交互にまわしてくんだけど、テーマがバラバラで
①に至っては、「ぼくの考えた1部解釈」を読まされているような気持ちに。
いちいちごていねいに1部の場面やセリフを再現してくれるんですが、
そんなもんいちいち勝手なモノローグつけて再現してくださらなくても知ってますという感じが強すぎる。
いっそのこと、これ、論文にした方がきっとよかったよこの本。
キーワードは「奪うもの」「与えるもの」「受け継ぐもの」「捨てるもの」。
このキーワードの設定はうまいと思う。
ディオは「奪われるもの」から「奪うもの」になって、
「受け継ぐもの」だったジョナサンを憎んで、
そのジョナサンは最後に「与えるもの」になる。
DIOの前に立ちふさがるのは「受け継ぐもの」であるジョセフと承太郎。
DIOがあのとき生き残ったのはエリナによる救済、という解釈から
「与えられるもの」となったDIOは、最後には
プッチ神父へ「与えるもの」に変わるわけだよね。構造的には。
このキーワードを使って論文を一本書いてくれたらもっと
すっと読める。本当に。
小説として致命的なのは、いちいちの場面に対して「DIOのモノローグ」みたいなものを入れてくれるんだけど、それがいちいちとんちんかん。
DIOというのを一人の人間として同情的に描こうとしすぎている印象。
DIOはある種悪のカリスマだから魅力がある、と思っている人は絶対に
読まないほうがいいですね。私もそのタイプなんですが。
肉の芽によってスタンドが極端に弱体化する、とかいうのも
3部のバトルを愚弄してんのかレベルの不要な設定。
このDIOは「迷えるDIO」なので、ハイになりそうもありません。
あと、統率力もないみたいです。
西尾維新だめだろうなあと思いながらダメもとで買ったら
やっぱダメだったなあ。
そもそももうちょっと文体なんとかなんないものかな。同じ表現多すぎ
というわけで☆2つは美麗なカバーイラストと、レビュー中で述べた
「~もの」論を評価してのもの。
読むにはまったく値しないと個人的には思います。
- 感想投稿日 : 2013年6月22日
- 本棚登録日 : 2013年6月22日
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