蒼路の旅人 (新潮文庫)

4.38
  • (659)
  • (513)
  • (144)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 3595
レビュー : 364
著者 :
heronさん ファンタジー   読み終わった 

文庫化されていたらわくわくして買うシリーズの一つ!
思い返すとこの皇太子チャグムがバルサに護られて旅をしたころから、こんなに巻数が重なったんだな・・と、しんみりします。
これまでのシリーズに出てきた登場人物たちやエピソードもしっかり活きてくるのがいいところ。まとめて読み返したい。

さてこの『蒼路の旅人』は、『虚空の旅人』に続いてチャグムを主人公とした物語。
皇太子という立場もあり、歴史的・政治的な香りも強くなってくる。
それでも前巻までは個人としてのチャグム・シュガがある程度は自由に動けたのだけれど、この巻からは環境に縛られて大きな歴史の渦に巻き込まれていく過程が描かれ始める。

サンガルからの助けを求める文が新ヨゴ皇国に届く。
南の大国タルシュがサンガルにまで手を伸ばしているというのだ。
チャグムの父である王は援軍を出し、チャグムの後ろ盾となっている祖父トーサらを向かわせる。
これを罠だと指摘し、父に反発したチャグムもまたトーサを追って海へ出なければいけなくなる。
これがチャグムの長い旅の始まりだった・・。

あんまり書くとネタバレになるんですが、これはチャグムの「決断の物語」です。
父親から憎まれ、勢力争いに巻き込まれ、民に期待され多くのものを背負わされ、自らの望まない路を歩まされるチャグム。
そのチャグムはやっと、自分の命をつないでくれた人々の重さを実感し、背負おうと決心できる青年になります。
さまざまな国の思惑、何が正しいのかわからない選択、どの道を選んでも絶望。
こういう不条理な状況って、現実にもありますよね。
それでもチャグムは不可能に思える路を見出して、自分の足で飛び出していく。その起点がこの巻です。

解説によると、これ以降は歴史ものとしての色が濃くなるとのこと。
それでも相変わらず一度手にとったらするっと先へ先へ読んでしまう魅力は変わらないし、寄せる信頼感は絶対的。
とにかく上橋さんのファンタジーは景色が描けてるのが凄いんだよな。
食べ物の描写、匂いの描写、風景の描写、全て目の前にあるようにくっきりと浮かび上がってくる。
ファンタジーでこれ以上大事なことってあるんだろうか。

レビュー投稿日
2010年8月19日
読了日
2010年8月19日
本棚登録日
2010年8月19日
3
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『蒼路の旅人 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『蒼路の旅人 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする