ことり

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本棚登録 : 1798
レビュー : 296
著者 :
hetarebooksさん 人生論。   読み終わった 

その人の人生の幸福度や充実度はその人にしか判断できないものなのだろう。

惹かれ合い、家庭を持ち、家族や友人に恵まれて一生を終えることを分かりやすい「幸せ」と呼ぶのであれば、小鳥の小父さんの一生は「不幸」だ。
自分の殻に閉じこもり家族と関わろうとしない父、突然「ポーポー語」を喋り出し小鳥に異常な執着を見せる兄、けして子供を否定せず優しいが最後まで「ポーポー語」を理解できなかった母。ポーポー語の唯一の理解者として、いつも兄の傍らにいた彼は両親の死後もひっそりと兄に寄り添い続けた。

無粋を承知で言うならお兄さんはきっとサヴァン症候群であろうし、他者との交流を避け鳥籠のような狭い世界に閉じこもり、ただ小鳥の世話に明け暮れる小鳥の小父さんも変わり者だろう。ポーポーや湿布薬を買いに青空薬局へ通い、図書館司書の女性に淡い想いを抱き、虫箱の老人に引き込まれ・・・出会いはあるものの、孤独なまま鳥籠を抱いて死んでいく。でも彼の人生を哀れむことはない。小鳥のように小さく脆く危うく、それでもしっかりとあたたかな時間がそこには流れていたし、彼はきっと幸せだったから。

並行して読み進めていたのが村上由佳さんの「星々の舟」で、家族を扱ったという意味では同ジャンルなのだけれど、あちらが濃密な血の重さと危うさを感じさせるのに対し、こちらは淡々と穏やかなのに危うさを感じるような作品だった。

レビュー投稿日
2013年11月20日
読了日
2013年11月19日
本棚登録日
2013年11月19日
5
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