【デザイナーメモ】エキゾチックな1話完結ホラーのシリーズ。国内でもTVアニメ化されているけれど、むしろ海外での方が知名度が高いかもしれない(Wikipediaでは9か国語版で項目が立っており、英語版は日本語版の倍以上の情報量がある)。
10巻を機に単行本のビジュアルをリニューアルするということでお話をいただいた。「ホラー」と「中国趣味」のお題は押さえつつ、やや色数を抑制して特金(DIC-619)を使った案が結果的に採用になった。金色は主人公のオッドアイとクリムト風のドレス、背景の麒麟からの連想。朱・金・黒で中国趣味に、グラデーションは明治の錦絵のイメージが入りこんでいる。
既刊分のPP(カバーに貼る透明フィルム)がマット(艶消し)だったので、最初の打ち合わせではイメージを変えるためにグロス(艶あり)に変更する案があった。DIC-619のような光沢を生かした色を使う場合グロスの方が見せやすいということもあり、理屈のうえではグロスで問題ないはずだった。ところがなぜかグロスPPでの仕上がりが一向にイメージできず、やはり変更せずマットで行くと伝えて実作業に入った。
途中でようやく気づいたのは、この作品のもう一方の主役は表題にもある妖しげな「ペット」であって、今回の画面では背景の麒麟がそれにあたる。動物の毛並みの質感がグロスPPとどうしても調和できない、というのが脳内でピントが合わなかった理由だった。リニューアルとはいっても、変えればいいというものではないと反省した。
ロゴは編集サイドの意向でアニメ化時のものを使用している。自作ではないがとても良いロゴで、今回はかなりその力を使わせてもらった。
折り返しやオビのビジュアルはとくに指定がなかったのでいろいろお遊びをさせていただいた。書体をHeiti(中国語用の太ゴシック)にしたり、「え」を「之」に、「く」を「<」に置き換えたり、勝手に文字要素を足したり(帯の表4側は記事そのものを提案して採用していただいた)とかなり好き勝手してみたが、なんとなくロジックの違う異国・異世界の住人とコミュニケーションをとろうとしている感じが伝わってくれればと思う。(カバー、表紙、帯を担当)
- 感想投稿日 : 2012年3月4日
- 本棚登録日 : 2012年2月21日
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