風に舞いあがるビニールシート

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本棚登録 : 2657
レビュー : 557
著者 :
himahimaoさん 小説   読み終わった 

短編集6編。ジュルナイブ(DIVE!,ランとか)と、アンソロジーでしか読んだ事のない作家さんだったんだけど、面白かったので普通の小説も読んでみようと思う。

・器を探して
前半、誰もが逃げ出してしまう、代わりがいないと語る仕事ぶりに共依存っぽいなという感じがした。一度無理やりにでもひっぺがして頭冷やした方がいいんじゃとハラハラしてたら、ラストで風向きが変わる。嵐の予感!!ってかそこで切っちゃうのか!ってか。器を持ち帰る彼女の顔ってどうなってるんだろうと想像。

・犬の散歩
街頭の献血募集の前を素通りする時、「あなたの募金で救える命がある」と広告を見たりする時、後ろめたいような関わりを持つことが怖いような気がしている。ので彼女の気持ちが分かる気がするなぁと思ったし、一歩踏み出した彼女が偉いなあと素直に思う。いい話で幸せな話。

・守護神
懐かしいな!というのが最初の感想。そうそう、大学の時ってこんな感じだった。要領が悪い所も同じか。やろうと思うといくらでもやれるし、押さえるべき文章を抜かしていないか自信がないからウロウロ前後して進まなかったりするんだこれが。ニシナミユキのストラップが芥川の蜜柑みたいだなと思った。

・鐘の音
読んだ後、「不空羂索観音」と「准胝観音」を検索して少し賢くなった気になる。似ているような似ていないような。執着と陶酔で自分を追い詰めていく所は、ハイになる感じに似てるのか。分かるような分からないような。欲が抜けて清々したラストはいいんだけど、別に鐘は無理にひっかけなくてもよかったかなとも思った。

・ジェネレーションX
持っていたことを忘れていた宝物が、ある日目の前に現れたような短編。前後の小説が重いので曇天の晴れ間みたいだなあと。カレーの残りとかうちでも昔あったあった。常識的な社会人、よき家庭人であることに疲れた時に効きそうかなぁと思った。

・風に舞いあがるビニールシート
タイトルだけ見て最初ポエム?と思ったが、一読してから改めて見ると全然違う。比重は世界的な難民問題じゃなく個人的な恋愛問題なんだけど。
彼女が彼の遺志を継ぐことにしたのって、助けた難民の中に彼の人生が息づいてるからかなぁ、彼が命懸けで掴んだビニールシートの希望を絶やしたくないからかなぁ、彼が死んで初めて彼に近づけるようになったからかなぁ、と分かるようでそれだけじゃなかろうな彼女の気持ちをつらつら考える。ドラマ化もしていたらしいので見ればよかった残念。

レビュー投稿日
2016年10月12日
読了日
2016年9月23日
本棚登録日
2016年8月31日
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