丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

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本棚登録 : 5777
レビュー : 730
著者 :
制作 : 山田 章博 
Yokoさん ファンタジー   読み終わった 

中学生くらいのときに『月の影 影の海』を手に取って以来、新作が出るたびにずっと楽しみにこのシリーズを読んできました。

ただ、前作の『黄昏の岸 暁の天』を読んだ後に、あれ?と思った違和感が、この短編集でもっと強くなった気がします。率直に言えば「これ、十二国記かなあ」っていう…。

もともとFacebookページなどでも告知されていた通り、この短編集は「苦難の時代を生きる民の物語」なので、王や麒麟を中心として描いていた他のシリーズに比べると地味な印象は仕方ないと思います。が、表題作の「丕緒の鳥」をのぞいて他の作品をそれぞれ読んでみると、「十二国記」といわれなかったらまったく別の単独の物語と言われても気づかないかもしれないなあと。

例えば、同じ短編で「華胥の幽夢」では、「責難は成事に非ず」という名言で、現実世界の政治をちくりと批判していますが、台輔の失道や周囲の官吏たちの苦悩を見事に描いていて、きちんと物語になっていました。

翻って「落照の獄」は官職名こそ十二国記の(というよりも古代中国の)ものになっていますが、事件そのものや、その役職に現代のそれを当ててしまえばそのまま物語として成立する気がします。落ちも救いのないものだし…。

「青条の蘭」も、その災厄が「これは王が玉座にいないために起こった災厄ではない」と、それまでの十二国記の物語をきっぱり否定しています。黄朱や猟木師という登場人物がでてくるので、かろうじて十二国記の世界を維持しているように見えますが、単独での物語が進んで行きました。

なんとなく、それこそ柳の王ではないけれど、作者は「十二国記」という物語を書くことに倦んでしまっているような印象を受けました。なので、前作でも敢えて「天の摂理が完璧でない」というように世界そのものを否定をしてしまったようにも。

まあファンの勝手な希望ではあるのですが、次回作は長編が予定されているそうなので、次作は苦難が続きながらも最後は希望に満ちた、このシリーズらしい作品となることを期待しています。

レビュー投稿日
2013年6月30日
読了日
2013年6月28日
本棚登録日
2013年6月30日
5
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