人にはそれぞれ他者とを推し量るものさしを持っていて、それを当てがって自分を認識するが阿部氏の作品は「個」がない人物の描写が圧倒的に多いのかなと感じた。
端的に書くとアイデンティティの崩壊、喪失を起こした人物とそれを取り巻く他者、社会との関わりの差異から生まれる軋轢から派生する軋みなり、歪みなりが噴出する感情やら情景が苦々しくも苦しく読者を包み込むが、何も特別なものではなく、私達も思春期時代に経験したはずだが、より先が狭まっている印象を受ける。私達には答えがなく、答えなどがない故に選べる道があり、何も持ち得ていないから故になにものでない君は君でしかなく、君は君でなにものにもなれる可能性があるはずだが、これが絶対数的に少ない。選択出来るのにしない。
これは今の俗世を表した空気がそうさせるのかは分からないが、顕著化した世界はどうりで真面目系クズを揺さぶるわけだなと妙に納得した上に、真面目系クズの特徴調べて見ていたら「エヴァのシンジの悪いところだけ集めた感じ」のクズという一文には笑ってしまった。
あの最終回での僕が僕でありえる理由、僕が僕であり続ける理由、僕が僕で居続ける理由の気づき、綻びも「ありがとうおめでとう」も無いままに迎えてしまった今、様々な人々に分配され、取り巻かれた承認欲求、承認不安の芽は根深く広がった社会になってしまわれたのだろうか?支持を受けるという事はそういうことなのか?
それは分からないが、私のものさしで測った世界でしかないのだろうな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
電子コミック
- 感想投稿日 : 2015年1月1日
- 読了日 : 2015年1月1日
- 本棚登録日 : 2015年1月1日
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