ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

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著者 :
Holonさん 電子書籍   読み終わった 

ごく普通の男で怠惰で美術学校の受験にも失敗した男であったヒトラーがどのようにしてナチ党の中で地位を確立していき、ナチ党による政権掌握からホロコーストがどのようにして行われたかを精到に記した名編。
組織体系づくり、言葉を侮らず、赤ペン先生で弁士を増員し、ヒトラーのカリスマ性、カリスマ支配を最大限に振るいつつ、その脇を固める有望な有志が様々な支持層に訴えるべく演出プランを仕立て、話せる言葉で人びとの心を掴み、熱狂させていく。
国の閉塞感に苛まれる状況下で望まれる形で、夢を抱くように語られる二項対立。天文学的な賠償金を抱えたワイマール共和国からユダヤ人に代表される弱者への差別意識と優越感、平和の確保を謳い再軍備へと、国としての復興や国民の威厳を取り戻す熱に暴力、欺瞞、揺さぶり、抑圧の翳りがより鮮烈に…。やがて国体への暴走へと進む。
領土拡大に伴う膨れ上がるユダヤ人の数に困窮し、強制移住計画も戦況の悪化とともにあれよあれよという内に幾つもの選択肢が潰され、閉ざされていき、ホロコーストへ向かっていくのは悲運で悲劇で暗澹たる気持ちに。非情である。敵がすぐ近くまで迫ろうともホロコーストの手を休めなかったことに疑問があったが、「救済」という表現で腑に落ちる。
ドイツをユダヤ人の魔の手から救うという妄想の使命感を最期まで抱いて、というならソ連侵攻、対米開戦という破滅に向かうとも思える選択も「救済」という名のもとに行われたのだろう。そして、囚われ続けていたのだろうと。

レビュー投稿日
2019年8月16日
読了日
2019年8月16日
本棚登録日
2019年8月16日
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