これは嬉しい文庫の新版です。初版が1960年ですから、約50年ぶりと言うことになりますね。
ナショナリズムとの関連で語られることの多いショーロホフ(旧ソ連の文豪。ノーベル文学賞受賞)ですが、社会科学と違って、文学には、流派はともあれ、人間そのものを見つめる姿勢があることを本短編集から感じました。
共産主義や原理主義的宗教にありがちな人間に優越するイデオロギーは、微塵も感じられませんし、もちろん「断罪」もありません。決して繊細ではありませんが、ロシア文学に通底するごつごつとして素朴な人間像がそこにはあります。あのソビエトでよくぞこのような文章が書け、また、大衆や党執行部が受け入れたとしみじみ思います。
人間は悪にも正義にもなりうること。良心の呵責はどこまでも背負わなければならないこと。決して読みやすい小説ではありませんが、体当たりする価値のある作品集だと思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本<文学>
- 感想投稿日 : 2011年12月10日
- 読了日 : 2009年9月22日
- 本棚登録日 : 2011年12月10日
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