村長ありき―沢内村 深沢晟雄の生涯

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レビュー : 4
著者 :
本≒人生さん 本<生の軌跡>   読み終わった 

映画「いのちの作法」の原点についてさらに深く知りたいと思い、本書を買い求めた。

映画に登場する人物や出来事が、「生命尊重の福祉」の勢いある水の流れであり、また、熟れた果実であるとすれば、故・深沢村長の村政に果たした業績は、川の源流であり、また、果樹の種であった。

まず、この本が三度にわたり、出版社を変えつつ(それぞれ版を重ねたのであるが)も、世に放たれたことに「出版人の良心」を見る思いがする。デジタルデータでの公開や、図書館での貸し出しでなく、繰り返し読む本だからこそ、「本」という形態にこだわり、届けていく。それは、私のようなものにとってまたとない福音だ。

そして、内容であるが、これが実に丹念に取材されている。労作である。客観的な事実や時代背景の記述は必要にして簡潔。その上に、深沢晟雄(ふかざわまさお)の信念、心情の描写に関しては、その心の襞にまで丁寧に及んでいる。相当な取材とそれを埋め合わせる想像力、そして、読み手を意識した構想力がなければ書けない本だ。

福祉の先駆的な取り組みはどうしても欧米から紹介されることが多い。しかし、この日本にも、貧困と闘い、地方自治を住民のものとして根付かせた先行例があったのだ。先駆者がいたのだ。それは戦争という生命軽視の時代を真正面から生き抜き、反省し、批判し、そこから人間にとって真に必要なものは何なのか、それを信念や政策にまで深沢は結晶化させた。

住民が深沢を慕う気持ち。深沢が住民を愛でる気持ち。いくつもの大きな壁、それはときに人の心であり、経済的な問題であり、地理的な問題であるのだが、それらの壁を乗り越える度に双方のつながりが強固になっていく様に、感動は押さえがたいものとなる。

レビュー投稿日
2012年3月6日
読了日
2009年6月27日
本棚登録日
2012年3月6日
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