日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声

  • 筑摩書房 (2011年8月8日発売)
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 戦後日本を代表する哲学者が、戦前の文化の厚みから近代の過ちまでを自在に語る。聞き手は戦後世代の評論家だ。

 「自分の仕事の根源にあるものは、自分が悪人であること」と鶴見はいう。ハーバード大卒の学歴をもつが、十代のころは不良少年で、学校を3度も退学になった。だからこそ、とにかく一番で東大にという「一番病」の危うさと、それに侵された国が見えるのだ。

 明治の最初の総理大臣、伊藤博文は、少年時代、肥溜めをかついで野菜を作っていた。その貧しさを忘れず、アーネスト・サトウが下関に来ると、自らが指揮して洋食を作り振る舞った。まさに、自由な精神を持つ個人だったのだ。しかし彼の作った社会の枠組みは、見識のない均質な大衆を生み出した。

 真面目な人は信用できない。武者小路実篤がそうで、「人間万歳」と唱えていたが、のちに「ルーズベルトと蒋介石とチャーチルは世界の三馬鹿」と話した。「いい人は世の中と一緒にぐらぐらと動いていく。……悪党はある種の法則性を持っている」から相入れるというのだ。

(「週刊朝日」 2012/03/09 西條博子)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 週刊図書館 400字評
感想投稿日 : 2012年4月17日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年3月9日

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