出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで

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本棚登録 : 217
レビュー : 41
著者 :
ヒロセマリさん 教養   読み終わった 

彼女たちの価値観「差別されないこと」を理解しないと適切な対応はできないのでは

別の本と併せ読みした、その一冊目。

読みたいと思っていた若年層の貧困に迫る話。

著者の鈴木大介さん(ギタリストではない)が直接会って、メールして、取材を進めていきます。

この本は次に紹介する本よりも、生々しいというか、もう一段階ダークサイドの、辛い世界。

第2章である「売春婦にもなれず」で書かれた事実が、重く、辛い。

ここで描かれている貧困は、

「精神も、環境も、体力も知力も、なにもかもを喪失した、言語を絶するような「持たざる者」。」

貧困から抜け出すメンタリティを養う環境が与えられず(それはその親も持たざる者だった可能性が高いから)、知力が無く、知的好奇心が無いと、自分の「思い」だけで物事を判断することとなり、その経験からくる頑なさが現状を打破することを拒む。

そういった彼女たちの特徴が、誉田さんという存在によって浮き彫りになる。

「民生のオバサン」とうまく付き合い、水商売をする女性たちと支え合い世の荒波を乗り越えている女性。

そんな誉田さんの話を別の女性にすると

「実はなにしてもあんまり差別されないタイプの人」

と評される。

「女には女社会のなかで、叩かれるタイプとそうでないタイプがあって、私を含めて出会い系サイトで鈴木さんの言う『隠れ破綻』をする女っていうのは、本能的に自分が叩かれやすいタイプだって知ってるんだよね。」

と付け加えます。

わかります。私はこれ幸いにも、「叩かれないタイプ」ですね。でも私がやっていたことを、叩かれるタイプの人がやった場合、その言い方、振舞い方によって叩かれ、いじめられる可能性がごく高いと思います。

なぜそうなるのか?

自分のことから考えてみると、その理由はこの本の中に出てくる「自己肯定感」の差なのか、と思いました。私も総数で考えると低い部類ではあると思うのですが、「これ!」という部分的なもので、これは自分凄いだろ、と思えることがあった。

それを自分であっためて、磨いて行ける環境があった。また、好奇心を持ち、貧しいながらも浮かんだアイデアを行動に移せる環境があった。
貧乏だけど、貧乏な中で自分がお金を得て、経済活動をしていく術を考え、調べ、実行し反省して繰り返すことが出来た。

それが「持たざる者」にはできない。なにもかもを喪失しているから。その世界にない要素だから。

彼女たちの価値観は「差別されない」こと。それを避けるのが第一義です。それを避けるために、合理的な判断ができないこともしばしば。このメカニズムを把握しないと、適切な対応はできないんじゃないかなあ。

彼女たち、そして次世代の彼女たちになり得る子供たちに必要なのは本質的には金ではなく、自己肯定感を持ち、知的好奇心を持てる環境なのではないか、と思いますがそれを解決していくのは金銭的な問題よりよっぽど難しい。

適切な対応、と書いたけど適切な対応とはどういうものなのか?その答えはとても1冊読んだだけでは出てくるものではない。

なので、このテーマに関する著作を読み、理解を深めるところから始めたいと思う。

レビュー投稿日
2015年12月26日
読了日
2015年12月21日
本棚登録日
2015年12月26日
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