別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判

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本棚登録 : 360
レビュー : 78
著者 :
ヒロセマリさん 教養   読み終わった 

なぜこの女に、多くの男がいとも簡単に騙され、命を落とすに至ってしまったのか

東電OL殺人事件、渋沢家三代に続く佐野さんのノンフィクションです。

連続結婚詐欺殺人事件の話です。

おそらく表紙のビジュアルを見て頂いたほうが、事件を一気に思い出すのでは。

モザイクがかかってますが非常に悪意ある表紙で驚きでございます。

この本は佐野さんが別海(べつかい)という北海道の23区よりでかいという地元での取材の話から裁判で判明していった事実と並行し、それぞれの被害者周辺への取材の内容というのがわかるようになっています。

私が疑問に思っていたこと、そして多くの人たちが思っていたことは

「なぜこの女に、多くの男がいとも簡単に騙され、命を落とすに至ってしまったのか」

ということですよね。

幸いにも殺されるに至らない人のインタビューを通じて思ったのが

「一ドルの報酬」というたまたま同時並行して読んでた別の本に出てきた心理実験。

1ドルの報酬で作業をした人と、20ドルの報酬で作業をした人を比較すると、1ドルの報酬で作業をした人の方が、その作業について意義のあることだ、と大げさに認識するというものです。

だから生き残った人は、この女性に騙されたことに対して、この女性には魅力があったのだ、と盛り気味で説明するのではないか。

整形しないのか。いとも簡単にじゃまになった人間を殺していくという内容は殺人鬼フジコの衝動と同等のものだと思うのです。

彼女はコンプレックスから中盤に整形を行い、それで人生を変えていきます。

なぜ木嶋は男から騙し取ったお金で整形をしたり、瘦せなかったのか。

脳内の認知のなかで、自分が美女として認識されているのか。
外見的に劣るのを重々承知の上、美人よりうまく人生を過ごせているという優越感があったのか。

それ以外の思考回路なのか。

それはこの本では解き明かせませんでした。どうなのだ、木嶋。(本の佐野さん風の口調で)

あと印象的だったのは、母親の異常さ。

「少年A」この子を生んでを読んだ時と同じ、ぞわっとした感じを、木嶋の母へのインターホンでのインタビューで感じました。

母親がおかしくて子供が犯罪者になるパターンの人、ではあったのだろう、しかし少年Aも兄弟がおり木嶋も4兄弟。

環境と性質が掛け合わさると、このような人間が出来上がるのか。
木嶋自体は小学生の頃、数百万入った貯金通帳を盗んだという人物であるので、幼少時代にこの異常な人格は形成されている。

騙されてしまう男の方も母親との環境であったり、その人の生い立ちについてやや厳し目に、取材がなされています。

親の加護の元、女性との交流という努力をしてこなかった中年層が孤独を感じると、容姿というものは判断の対象の埒外に行ってしまうのか。

そういう状態になると、自分を選んでくれたということ、声色、料理、積極的なアプローチ、すべてが救いになるのでしょうか。

お金の要求さえも、自分が誰かに必要とされているという喜びが勝ってしまう。そうなった人が殺され、お金になると止まった人が生き残ったのか。

なんとなく、自分の腑に落ちるところまで考えられました。

皆様、ご注意を。

ひとつきになったのは、本の中の「1」の文字が全部「Ⅰ」になっていたんです。昭和3Ⅰ年、みたいな。これが意外とちらちらと目についてしまって、これは残念でありました。

レビュー投稿日
2016年1月26日
読了日
2015年12月30日
本棚登録日
2016年1月26日
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