高校時代に映画サークルを立ち上げた4人。世間的な評価も高まっていたさなか、突如中心だったサキが突然いなくなり解散になる。そうして十余年が過ぎ、それぞれの人生を歩んでいた3人が直面した過去の真実とは…
そんな粗筋の、女性4人の過去に潰えた夢と、それぞれ「うまくいってない」現実の齟齬に苦しみ悩む物語。フラッシュバックのように過去に撮った映画がエピソードのモチーフと描かれ、一人ひとりの抱えている事情が明らかになっていき、やがてサキが失踪した理由も詳らかになっていきます。筋立てや真実そのものはストレートなものですが、自分のエゴとかつての夢のはざまで苦しむ女性たちの姿がとても現実的に描かれていて共感も抱けました。
「現在」に不満があれば「過去」に目を向けたり目をそらすということは誰でもすることで、彼女たちのように眩い日々があったのならなおさらでしょう。そして訳も分からず消えた彼女にその責を問いたくなるというのも。
自分の人生はあくまで、自分自身の選択肢の積み重ねの結果に過ぎない、ということから、どうしても目をそらしてしまう、それがひとというものだろうから。
映画というテーマがとても効果的に用いられていて、終盤の一連の場面は美しいな、と思いました。「それ」しか知らない彼女の、たったひとつの「愛しい人たちへのメッセージの伝え方」。その純粋な想いは、「過去」に囚われていた彼女たちに「未来」へ歩む力を与えてくれるものに違いないと、そう感じたのでした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年5月18日
- 読了日 : 2019年5月18日
- 本棚登録日 : 2019年5月18日
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