「サクリファイス」からつづくサイクルロードレースを描いたシリーズの最新作、今回も楽しませて頂きました!
世界最高峰のレース・ツールドフランスを舞台に、レースそのものの厳しさ、出場する選手たちの不穏さもはらんだ人間模様を描きつつ、物語はテンポよく展開していきます。
アクションを描くのに比喩は不要…というような言葉を小説家の方が言われたことがあるようですが、たしかに、この作品でもかなり比喩表現を抑えたシンプルに徹した文章により、余計にレースの緊迫感や疾走感が引き立っているように感じます。
今回はレースの進行とともにひとつの謎を追う展開にもなっていて、緊張感を高めています。その謎そのものと、主人公の行く末、そしてレースの雲行きがどうなるのか…、さまざまな要素が詰め込まれていてなかなか濃い味わいがあります。
…憧れだった存在がそうでなくなり、そして今また「何を考えているのかわからない存在になっている」というのは、うそ寒い感覚にさせられる、ような気がします。自分がここに立っているということそのものを揺らがせるような、不安を抱かせる、というか…。それを乗り越えてこそ、人は成長していくのでしょうが、切ないものを感じたのでした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年10月22日
- 読了日 : 2016年10月19日
- 本棚登録日 : 2016年10月22日
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