打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (角川文庫)

  • KADOKAWA (2017年6月17日発売)
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感想 : 85
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「私が勝ったら、何でも言うことを聞いて」

夏休みの花火大会の日。島田典道は小学校の時から気になっていた及川なずなに、親友の安曇祐介も想いを寄せていることを知る。真夏のプールサイド、いつものように祐介とふざけていると、二人はなずなから突然、50メートルの競泳で"賭け"を申し込まれる。
賭けに負けた典道は、その日の夕方、親友の祐介がなずなから花火大会に誘われたことを知る。しかし典道は、何故かなずなと花火大会へ行くことになってしまう。事情が飲み込めない典道は、家出をして来たと言うなずなと共に花火大会へ足を向けるが、なずなは彼女の母親に連れ戻されてしまった。彼女を取り戻すため典道は、花火大会の同じ一日を繰り返す。繰り返された世界が間違った世界だとしても、何度も何度も、ただ、彼女を取り戻すためにーー。

親の庇護がなければ生きていけず、自分の進む道の選択を強いられる子どもたち。まだ大人になれないが故に変えることのできない現実だけが残って、リアルな切なさが胸に迫る。
典道となずなが何度もすれ違い、何度も繰り返しやり直して最後にたどり着いた世界は、二人が望まず、世界が望んだ世界。あるべき現実のカタチにようやく気付いた二人は、別々の道を歩き出す。そして静かに夏が終わる。

この物語の面白いところは、本当の世界と、もしもの世界1〜3の時系列がずれているところ。典道の物語の裏に、祐介となずな、それぞれが主人公の物語があり、それぞれの"本当の世界"が存在すること。誰かの"本当の世界"は、他の誰かの、あったかもしれない"もしもの世界"。
そのことに、どれだけの人が気づいて読んだだろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2017年10月18日
読了日 : 2017年10月18日
本棚登録日 : 2017年10月17日

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