平たく言えば17世紀ヨーロッパを生きた版画家の生涯を記した小説です。唐突に終わり唐突に始まる短いセンテンス、削ぎ落とせるだけ削ぎ落としたソリッドな文章に時系列的な繋がりを見出すことは難しく、徐々にと高い視点から俯瞰する視野の広がりが生まれてきます。これは崇高な感覚でした。黒を基調とした版画家の人生に折々差し込める光のコントラストに瞬きながら、主人公それぞれの時代の版画作品を言葉の力を通じて鑑賞しきりました。徹底して無駄なく潔い文章だからこそ、言葉のめぐらす共振が秘めやかな緊張となって強く響いてきます。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
フランス文学
- 感想投稿日 : 2014年1月11日
- 読了日 : 2013年1月13日
- 本棚登録日 : 2014年1月11日
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