生真面目なペルー青年が40年もの間ひとりの悪女を愛し続けて翻弄されまくるという所謂ファム・ファタール小説。べらぼうに読み易くアッという間に読了。もちろん面白さゆえにページをめくる手が止まらなかったからでもあるけれど、その引っ掛かりのなさが物足りなくもある。それにこの女性、そんな魅力的じゃあない。ファム・ファタールものならエリクソンの『Xのアーチ』の方がアクロバットな展開で頭がこんがらかりながらスリリングな興奮を味わえる。なんていやらしい感想になってしまったけれど、頭を消耗しないで楽しむ読書もたまにはいい。
常にペルーの情勢を憂うアタウルフォおじさんがいちばん好き。主人公の二人の男女はそれぞれ全く別の人格として描かれているけれど、結局は祖国から逃げ目を逸らして生き続けたことで同じ穴の狢だ。この対比でリョサが言いたかったことは何なんだろう?と読了後の今になって考えている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ペルー文学
- 感想投稿日 : 2015年5月28日
- 読了日 : 2015年5月28日
- 本棚登録日 : 2015年5月28日
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