自閉症の兄・レイモンドを、父の遺産目当てで精神科病院から連れ出す弟・チャーリー。自閉症についての知識もなく、さらに人としてのやさしさにも欠けたチャーリーは、レイモンドの行動やその世界観に思いを馳せる余裕をもつことなく、イライラを募らせ、ときには罵倒しながら旅を続ける。
しかし、兄の症状が決して自分の思い通りになるようなものでないことを理解し始め、そして過去に幼い自分をやさしくあやしてくれた存在の正体が兄であったことを知ったとき、弟の心は徐々に変化を見せ始める。
弟は自分なりに兄を受け入れていく。自閉症という病気ではなく兄自身を受け入れる姿勢を見せているところに、この作品の意義があるように思う。決して身構えることなく、兄の言葉に耳を傾け、兄の欲するところを自分なりに見出そうとする姿勢。精神疾患当事者の家族が困惑の末に至る、より好ましい状態を再現しているように思える。
専門的な知識はなくとも、彼らはわかりあえた。ようやく巡り合い、わかりあえた兄弟はまた別々に暮らすことになるが、派手に涙をさそう演出があったり、実際に兄弟が涙を見せることはない。あくまで淡々と、事実を受け入れる兄弟の姿が描かれる。リアリティあふれる映画ではないか。
何度も繰り返し観る作品ではないのかもしれない。しかし、家族とは、兄弟とはどういうものか、自閉症という疾患を仲立ちにして改めて考えさせられる、すばらしい作品であった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
健康・からだ・こころ
- 感想投稿日 : 2010年9月22日
- 読了日 : 2010年9月20日
- 本棚登録日 : 2010年9月22日
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