雨月物語 (ちくま学芸文庫 コ 10-1)

  • 筑摩書房 (1997年10月1日発売)
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上田秋成の雨月物語を村上春樹の本で紹介されていたので読んでみた。
雨が降る日、もしくは月夜の日に幽霊や鬼などの怪談話が繰り広げられる内容である。

作者の上田秋成が怪談話という物語に乗せて、自分が思っている思いや考えを伝えているところが特徴的。
上田秋成の仕事は「町人」。江戸時代の職人、商人のことを「町人」というらしい。「貧福論」という章では、町人の上田秋成らしさが一番出ていた気がする。

現在の貧富は前世の行いによって決まるというのだから、もし前世の行いが良くて現在で富んでいるのであれば、現在も行いが良くなるはずだ
でも、実際には10人に8人は富を守るべく悪行をしている。

一方で貧しい人は前世で悪い事をしていたから貧しいとしても、昼も夜も一所懸命に働いている人もいて、それは善行だと言える。

では、結局貧富を分けるものは何なのか?とお金に(お金の神様や仏様ではないと本人がいう)問うのである。
お金はこう答える。

「私は人間のことは、金ゆえによくわからん。でも、1つ言えることはお金をどうやって使うのか?というのは、前世で良い行ったかどうかとかは関係ないという事だ。
どんなにお金を持っていても使い方を間違えれば、水のように高いところから低いところに一気に流れ出てしまう

お金を持っている・持っていないというのは技術の話であり、技術があるものはお金を集め、下手な人は集められない。
時の運を得たものが倹約し、節約して良く働けば自然と家は栄えていく。そこに徳があるとか、無いとかは関係ない。別の道理なのだ」

この文章は商人でもあった上田秋成だからこそかけた文章であるし、きっと書きたかった文章なのだと思う。

「良いことをすればお金が溜まる」
というのは人としての道を示す上では正しいかもしれない。実際、良い事をしてお金が溜まる世の中の方は、悪事でお金が溜まる世の中になるよりも社会的には良いからである。
しかし、実際お金の立場からすれば、「集まる所に集まるだけ」というシンプルな話なのだ。
そして、集まるような技術を身につけているかどうかがポイントだというのも、また事実だ。
大金を稼いだプロ野球選手が破産をした話があるように、どんなにお金を持っても使い方を間違えると破産の方向へ突き進む。

「時(時代)」を読んでお金を稼ぎ、それを上手く運用していったもの(貯金ももちろん含まれるし、節約も含まれる)がお金持ちになるのだという事を江戸時代に言っているのだから面白い

昔も今も、色々な話が出てくるけれど、本質は同じなんだとしみじみと感じた

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年8月10日
読了日 : 2020年8月10日
本棚登録日 : 2020年8月10日

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