怪奇色と幻想性の色濃い作風で有名な夢野久作の作品です。この「瓶詰地獄」は海洋研究所への手紙1通と無人島から兄妹が送った3通からなりたつ話になります。
この作品は兄妹が生きるのに不便ない無人島に流れついてから10年以上二人で過ごし、たがいに男女として惹かれあう近親相姦の話になります。
一通目の手紙は無人島に助けの船が来たが罪の意識を感じ、身投げする旨と両親への謝罪が書かれています。二通目は二人でどのように無人島で生活していたか、成長してから互いに惹かれあってしまったことなど苦悩の手紙でした。三通目は難しい漢字など使われずに書かれた親に助けを求める手紙です。
これらの手紙は一通目、二通目…と呼んでいますがこれらは海洋研究所に三通同時に流れ着いたものなので、正しい順かわからず話を読むにつれ少しわかりにくくなっていきます。
まず考えられるのは、三通目は一番初めに幼い二人が書いた手紙ということです。助けを求める簡単な文の手紙なので聖書で文字を勉強する前のものだと考えられます。一通目の手紙は書いた後自殺をしているためこれが最後の手紙になると思います。兄弟が書いた手紙の順は三通目、二通目、一通目の順だと考えられます。
この話を読むにあたって頭に入れておきたいことは兄がキリスト教信者であり、二人が字を学ぶのに使用していたのは聖書だったというところです。キリスト教は近親相姦を禁じていて、無人島で読める書物は本だけであり幼い二人の常識は聖書によって形づくられていたということです。罪の意識が強くなり兄妹で結ばれないからと身投げする二人の行動が少しは理解しやすくなると思います。
「瓶詰地獄」は、「瓶詰の地獄」と呼ばれることもあるのですが、「瓶詰地獄」のほうが閉塞感があり無人島から出られない状況と社会の常識的に許されない二人の気持ちがタイトルとして表れていると思います。
手紙の順や二人の行動など解釈が分かれる面白い話です。
- 感想投稿日 : 2022年7月16日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2022年7月16日
みんなの感想をみる