君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2017年2月25日発売)
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感想 : 278
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読み始めた時は、やっぱり私にはもう高校生+病気で死ぬ話(そしてライトノベル)は無理だと思ってサクッと読もうとしてたんだけど、終盤になるとちゃんと読みたくなっていた。

宇宙の話。
どんなものにも終わりはあって、地球だって宇宙だって終わる、そんなこと分かってるし、実際人間が生きてきた年数なんて宇宙の歴史から見たらほんの一瞬。だからいつ人間が滅びてもおかしくないし、あり得るだろうと思ってはいたけど、滅びるならじゃあ、生きてきた何かを残せば良い、残ると思っていたのだけど、もし地球ごと滅びたら確かに文化も言語も文献も、何にも残せない。そうなると人間が誕生した意味、存在価値は何なんだと問われると、答えられない。
でもどんな些細なことでも「有る」のと「無い」のでは違うと思う。人間が生きているだけで、宇宙に何か作用しているんだって私は思ってる。

ロミオとジュリエット。
香山がまみずとジュリエットを重ねて泣くところ。この辺りから読んでいて悲しくなった。
高校生が、ほとんど話したこともない好きな女の子が病気で死ぬからって、こんなに悲しむものなんだろうか。他人で、損得勘定もなく悲しんでくれる人がいるって、とんでもなく幸せ者だと思う。

私は読んでいて、作者はもしかして似たような体験をしたんじゃないかと思っていた。だってそうじゃなければ、「生きてても死んでるような気がしてた」とか「生きているのが後ろめたい」なんて心情を描写できるだろうか。これは身近な人が(たぶんあまり納得できない形で)亡くなった人が考えることじゃないだろうかと思っていた。
だからあとがきを読んで納得した。
私にはそんな経験もない故にそんな考えに至ったことがなかったから。

生きている人と、もうすぐ死ぬ人だったら、たぶんもうすぐ死ぬ人の方が引力が強いんだと思う。だから生きている人はしっかり自分の力で立っていないと、死に近い人に吸い寄せられてしまうんだと思う。死ぬと分かっていると、後悔や未練があるのに無理にでも無くさないといけないから、色んな意味でエネルギッシュになるんだと思う。それが生きている人から見たら、しかも生きる意味も分からず生きている人だとしたら、魅力的に輝いて見えてしまうのも無理はない。

もしかしたらまみずは、卓也を引っ張ってしまうのかと思ったけど、ちゃんと卓也に生きる意味を与えた。自分の代わりに誰かが生きてくれることで、死んだら終わりにしない。この考え方はとても良いと思った。

それにやっぱり、生きている限りは自ら死んだらダメだと思う。生きなければならない。1分1秒でも、亡くなった人が生きたかった命だと思うから。
それに、死後の世界や輪廻転生などあり得ない以上、途方もなく長い宇宙の歴史の中で、気の遠くなるような確率で、奇跡の連続が起こって生まれてきた、貴重で、唯一無二の命だから。
自分という命は、もう二度とこの先何が起ころうと、生まれてこないのだから。

続編があるのか…どうしよう。

20200524

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家さ行
感想投稿日 : 2020年5月25日
読了日 : 2020年5月25日
本棚登録日 : 2020年5月25日

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