新世界より(上) (講談社文庫)

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本棚登録 : 10165
レビュー : 870
著者 :
わたあめさん 作家か行   読み終わった 

読んで考えたことが山程ある。

アニメで見ていたので大筋は知っているのだけど、その時はなぜこんな行動を取ったのか、何を考えていたのかが分からなかったし、現実には存在しない道具や生物についても詳しくは分からないままだったので、原作を読んで納得した。

知らなかった言葉が沢山。特に生物の名前が大量に出てくるし、実際に存在するものの中に架空の生物を当然のように混ぜ込んであるので調べないと判別ができない。
他にも知らない漢字や語句を調べながら読んでいたので、調べている時間の方が長かったかも……。
原作は早希の回想という形で書かれているため、お茶を濁すと言うか、答えをはっきり言わずに話が進んでいくこともあり、粗筋は知っていても謎が積もっていく。


本編からは脱線するけど気になった言葉が二つ。

「土蜘蛛」はこの作品に出会う前から何となく知っていた言葉だけど、実際に古代日本でそう呼ばれる人達がいたことは全く知らなかったし、そもそも私は日本史で習ったレベルでしか古代日本、更に歴史全体を知らないことに気付かされた。日本人だけど、そのルーツは知らないも同然。すごく知りたくなった。
「黥面文身」は全く知らなかった言葉で、まずアイヌや琉球で刺青の文化があったことも最近知ったし、(言葉が正しいかは不明だけど)本土でも広まっていた風習で、しかも中国の書物に証拠として残っているなんて。ますます興味深い……。


アニメと印象が違ったことと言えば、早希が覚に対してかなり厳しく当たること。対して覚は原作の方が早希のことをよく見ているし、いざという時に守ってあげるし、かなり頼りになる。土蜘蛛の兵士に追われてバラバラに逃げている時、早希のことを見つけたのも偶然ではなさそう。
バケネズミの考えもより伝わってきて、知能の高さが感じ取れた。

著者の頭の中の、超能力が存在する1000年後の未来が面白すぎる。身分証は紙切れと化し、図書館は自走型アーカイブへ。文明は非常に進んでいるのに人間社会はなぜか原始的な生活に。まるでナウシカのような世界。

今、全人類が突然PKを持つようになったらどうなるか。恐らく短時間で地球のほとんどの地域は最悪の結果になると思われる。それは極端な例えかもしれないが、皆が強力な武器や核兵器を持ったと考えれば同じことが起きる可能性が高いだろう。
結局、「ヒトという生き物を社会性を持った哺乳類にすぎないと捉え直す」「ようやく人類は神の力を手に入れたのに、あまりにも強力すぎる力を制御するため、自らを、人から猿、猿からただの哺乳類へと、貶めていかなければならなかった」ということになるのかもしれない。

早希が手記を書いた動機が深い。
「人間というのは、どれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎたとたんに忘れてしまう生き物であるということだった。」
人間は過去を忘れたら終わりなのだと思う。過去から学ばなければ人類自らを滅ぼすことになる。だから、この作品で起こることや早希達がそこから得る教訓は、現実世界への風刺になり得るのでは。

無瞋上人の言葉で納得できないことがひとつ。「他人の痛みを、わがこととして感じられる」ことが「人と獣を分かつもの」だと言っているけれど、獣だって自分の子供や飼い主を守ったり助けようとしたりする。
痛みを感じるから人間、感じないなら人間ではない=獣、ということではなく、人間だって動物の一種であるし、痛みを感じないのは単に病気だから、精神疾患を患っているから、ただその違いだけだと思う。だから人間だろうが犯罪は犯すしいじめるし、そこに生物として優位なことは全く無いと考える。
まぁ無瞋上人は早希に印象付ける為に例えで言ったのかも知れないけれど……。


私の調べ学習は続く。

20190917

レビュー投稿日
2019年9月17日
読了日
2019年9月17日
本棚登録日
2019年9月17日
2
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