前作でスイスの自殺幇助団体ライフサークルを舞台に安楽死の現場を徹底的に取材した著者は、身体の機能が次第に喪失するという難病を抱えた一人の日本人女性から連絡をもらう。本書は彼女が様々な障壁を乗り越えて、遠いスイスの地でライフサークルによる安楽死を遂げるまでを取材した続編である。
難病を抱えて姉と妹に介助され、数度の自殺未遂を経て彼女が行き着いたのは遠い異国の地の自殺補助団体、ライフサークルである。治る見込みのない難病などから安楽死を希望する患者は、ライフサークルのような団体による安楽死の計画が決まることでかえって心身の安定を得ることがあるという。本書で描かれる女性もそうであり、”いつでも安心して死ねる”という選択肢を持つということが、あたかも金融におけるリアル・オプションのように、患者の不安を軽減するというのは、このような話を聞くまで、全く知り得ない世界であった。
件の女性は介助してくれた姉たちに看取られ、静かにスイスにて息を引き取る。本書に収められた写真からも、その安らかさが痛切なまでに伝わってくる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2019年10月20日
- 読了日 : 2019年10月10日
- 本棚登録日 : 2019年10月8日
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