初めて読むノルウェー人作家の作品であり、村上春樹による翻訳。
前評判通り、読み終えた今感じるのはこれが非常に不思議な読後感を与えてくれるということである。その要因の一つは極めて心理描写の少ない叙述スタイルも相まって、登場人物のそれぞれが本心で何を考えているのかが全く分からず、かつそれが登場人物同士間でもそうである、ということである。主人公の50歳の男を中心として、その愛人、前妻との間の大学生になる息子、友人の医者が登場するが、そのそれぞれが固有の世界で生きており、同じ時間・空間を過ごしているはずなのにガラス板1枚を隔てたているかの如く、そこにはお互いの理解を拒む何かが存在している。そうした薄気味悪さにも関わらず、ここでの登場人物はそれを自明のことのように見なして生きていること、そこにこの小説の面白さがある。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2017年5月28日
- 読了日 : 2017年5月28日
- 本棚登録日 : 2017年5月27日
みんなの感想をみる