インターネットが真に自由をもたらすフリーカルチャーの源泉である、というような言説は既に幻想になって久しい。にも関わらず、幻想にしがみつきたい愚者が未だに残るのはなぜだろうか。本書はそうした愚者をマシンガンで撃ち抜くかの如く、そうした幻想を実際のインターネットトラフィックのデータや、それを元にしたモデルに基づくシミュレーションで反駁する。
本書の結論は極めてシンプルである。インターネットエコノミーは、多額のデータセンタやソフトウェアへの投資によって人間が持つ有限の時間やアテンションを独占する。それは物理的な工場を運営するのと同じような規模の経済によって成立する、というものである。
本書の後半は、そうした”関心(アテンション)の経済”において、新聞における地域紙のようなローカルメディアがどのように生き残るか、という点にフォーカスがあたっている。その現実的な処方箋は、
・とにかく移気なユーザのトラフィックを呼び込むためには、サイト表示の速度を改善すべし。改善すべし!
・サイトの更新頻度を加速せよ。一つのコンテンツの文章量を短くして、それなりの質のコンテンツを量産すべし。量産すべし!
というものである。
その点で、本書は死に体にある日本の新聞業界の人間にこそ読んで欲しいと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
テクノロジー
- 感想投稿日 : 2021年3月21日
- 読了日 : 2021年3月21日
- 本棚登録日 : 2021年3月21日
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