J・ディラと《ドーナツ》のビート革命

制作 : ピーナッツ・バター・ウルフ 
  • DU BOOKS (2018年8月3日発売)
3.82
  • (2)
  • (10)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 93
感想 : 6
4

この10年ほどの音楽シーンにおける特徴の1つとして、ビートメイキングに対する注目度の高まりが挙げられる。そんな流れの1つの源流としてビートメイカーを1人挙げろと言われたとき、恐らく最も多くの票を集めるのは本作の主人公、J・ディラではないだろうか。

2006年、32歳という若さで夭折したJ・ディラの影響は現在の音楽シーンにおいても様々であるが、例えば私自身が身近なところで言えば、生ドラムの演奏における”揺らぎ”の価値を再発明したという点が挙げられる。サンプラーなどで打ち込まれるビートは通常、”クオンタイズ”という機能を使うことによって拍に対してジャストなタイミングで打ち込まれることが多い。一方、J・ディラは”久遠タイズ”を使わずにキックやスネアのタイミングが微妙に”揺らぐ”ことで、ナチュラルかつグルーヴィーなビートを生み出したとされている。

その”揺らぎ”を意図的に人力で再現する、というのが2000年代以降のドラマーに課された新たなチャレンジであった。微妙な”揺らぎ”を表現するには極めて高いセンスと才能が求められるわけだが、それによってドラムという楽器の可能性・表現力は明らかにネクストレベルに進化していったと言える。

そんなJ・ディラの生涯、そして名盤である『Donuts』の精緻な分析などをまとめた本作は、ビートメイキングという行為を知る上で第一級のテキストである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 音楽
感想投稿日 : 2023年1月21日
読了日 : 2023年1月21日
本棚登録日 : 2023年1月21日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする