永遠の0 (講談社文庫)

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レビュー : 5384
著者 :
よーこさん 歴史   読み終わった 

朝から布団の中で号泣した。今も何て言ったら分からないけれど、読んだ直後の感想が一番正しいから今の内に書いておこうと思う。

私にとって、戦争というものは本の中にもあったようにどこか遠い話である。「永遠の0」を読んだ今もその感覚は完全に消えない。小学生の頃に、「自分のおじいさんおばあさんに戦争の話を聞こう」という企画があったけれど、「戦争の頃はまだ十代前半で幼かった」と答えてくれた祖父母を思い出し、本に書かれていた「戦争経験者が表舞台からいなくなりつつある」の文章は私にとって重く伸し掛かってくるものがあった。

日本世界問わず歴史が好きで、歴史に関しては色んな本を今までに読んできたが、近代における戦争について私はほとんど知らない。戦争は苦しい歴史で、救いの無い、見るのが辛い写真が並ぶものとして認識していて、知るのが怖かったというのが正直な理由。特攻も洗脳だったのだろう、と調べもしないで勝手に思っていた。今では恥ずかしく、申し訳ないことに思う。

今回この本を読んで、今の自分の存在が、自分の過ごす生活が、この時代の多くの犠牲の上に成り立つものなのだと思い知らされた。知らなければならない過去に、初めて知らされた感覚だった。

何か面白そうな本は無いかと本屋を巡っていて、平積みされて目を引いたこの「永遠の0」。私の知らない戦争が生々しく、鮮明に、宮部久蔵という人物を追っていく形で描かれている。影でしかなかった亡霊がどんどん形を帯び始め、愛おしささえ感じられるようになる書き方は凄い。分厚い本だというのに飲み込まれるように読み進められた。

登場する健太郎は私と同年代。宮部さんともさほど変わらない。

生まれてきた人間にとって、「生きたい」という気持ちは本能だと私は思う。だというのに、「死にたくない」と呟けば臆病者扱いにされ、周りに流されずにはいられないあの時代の状況で、それでも生きたい気持ちを貫き続けた宮部さんはどれだけ強い人なのだろう。

そんな彼の姿が良いようにも悪いようにも多くの人々の中に刻み込まれ、多くの人たちの中で彼は生きられた。だから松乃さんも他の人の中に生きる宮部さんを感じたのかもしれない。

最初と最後の繋がりにはぞっとせずにはいられなかった。あんな風に、多くの人々が、宮部さんのように家族を想う一人の人間が、生を全うしたのだと思うと涙を浮かべずにはいられない。

戦争は惨い。それをやめられないのは人間の性なのではないかとも思う。それでも日本軍は愚かだ。何故普通に考えれば分かることが分からなかった。何故降伏しなかった。人の命の価値が、ここまで貶められた時代があったのだと思うと、遣る瀬無さや悔しさや怒りに似た感情に押し潰されそうになる。

現代に、彼らの望んだ平和が実現しているかは分からないけれど、少なくとも私は幸せに生きている。悩みも辛いことはあっても、両親の愛情の下にここまで育って、毎日笑って、友人とふざけ合って、大学で好きなことを学んでいる。

私はこれからも生きていきたい。いつかは結婚して子供を産んで、静かに年老いていきたい。そんな考えが当たり前に出てくる。夢も見たい。行ってみたい場所も、やってみたいこともまだまだ沢山ある。明日死ぬなんてことは考えたこともない。けれど、この生きたいという気持ちは、この時代に生きた人々にとって、どれほど強いものだっただろう。

同じ年代で命を懸けた人々の犠牲の上での今に生きる私。

知るべきことを教えてくれた作品。
今の平凡な生活が、掛け替えのない幸せの中にあるのだと教えてくれた作品。
心から感謝します。ありがとうございました。


追記:読了後、歴史に詳しい父にこの本について話したら、私の曽祖父とその兄弟が戦死していたことを初めて聞かされた。曽祖父はガダルカナルで餓死、兄弟は戦艦大和で沈没したという。自分の身内にも命を懸けて戦ってくれた人たちがいた。もっときちんとこの時代について知りたい。

レビュー投稿日
2013年5月30日
読了日
2013年4月4日
本棚登録日
2013年5月30日
8
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