ボスラッシュを越えて=食物連鎖からの脱出。
主人公もある程度強くなったからこそ、却って一撃死が目に見え緊迫感を煽った中層での戦いも、ここ五巻でいよいよ終わりを迎えます。
ここまででオトシゴ→ナマズ→ウナギ→火竜と中層で相手する敵も徐々に強くなっていきましたが、その頂点に立つ火龍の一体、レンドとの戦いもやはり企図せぬ遭遇戦でした。
先に言ってしまうと、四巻の最後で相対した火竜も、幸運あってこそとは言え大体主人公のペースで倒すことが出来ました。
けれど、あの地龍アラバと同じ「龍」の名を持つ者との戦いは訳が違います。
ここから同格の強者同士の戦いは食うか食われるかとはまた違う意味を持ってきます。
マザーにテリトリーを侵され、それこそ払いのける感覚で引き連れた配下込みで一蹴され、プライドを傷つけられた火龍レンド、目についたのは憎き彼奴の小蜘蛛。
知性を持つ者同士、布石を打ち合い、互いが持てるすべてを賭けての総力戦に移行します。
運がいい悪いという言い訳が許されない、作品全体を見ても最も拮抗した遭遇戦は紛れもなく屈指の名バトルだったと思います。
最後まで立ち向かい、力なく横たわった火龍レンドには半端になってしまった強者の悲哀を感じました。
火竜の最期の時に主人公は語りましたが、それを踏まえても、次の節目である地龍アラバ戦とは大きく性格が違うのだなと思うと、結構感慨深いです。
後に残すのは死骸だけではない、経験値だけでもないのです。
ともあれ、美味しいものというご褒美を合間に挟みつつ、合間に苦い思いをもたらしてきた中層もほぼ、ここまで。
物語は次なる展開に向けて動き出します。
中層で大きく成長したスキルとステータスによって、出来ることの幅が広がり、大きく深まりました。
そして今後もキーになる「空間魔法」の解禁、その成果については次巻を待て!
そして、スキルとシステムメッセージという、大して語る口を持たなかった情報源から徐々に読者にも伝わってくる、世界の裏側に見え隠れする何者かの影。
何者か――いよいよその存在が触れられてきた管理者が動きます。
スキルやステータスといった強さではどうにもならない相手を直接認識することになるのですが、それもまた次巻以降で触れることになるかもしれません。
そんなわけで、この巻でも縦横無尽に空中を駆けることになる主人公、本当に息つかせることのないスピーディーなバトル展開でしたね。
個人的には、遠いは遠いけどようやく目標となる進化先「アラクネ」のシルエットが出たのも嬉しかったり。うん、流石のエロチック。
ほか。
かかし先生(と原作の馬場先生)は本当に順を追って説明してくれているのだなあ、と改めて思ったり。
コミカライズとしても、どのようにアレンジしてくるのかそろそろ新鮮な驚きが見えてくる頃合いかもと、思ったりもしました。
ついでに言うと原作小説九巻と歩を同じくして、発表されたアニメ企画で更なるメディアの違いをどう生かしてくるのか気になってきました。
コミカライズとして大成功と言えるこの作品の出来を前に、読んで改めて思いを新たにするのでした。
- 感想投稿日 : 2018年7月18日
- 読了日 : 2018年7月18日
- 本棚登録日 : 2018年7月18日
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